国立大学の監事、常勤化へ…組織的な対応案件増加
国立大学の多くで監事が9月1日付で交代・再任となる。組織の業務執行をチェックする監査を担い、「国立大学法人の人事で、文部科学相が任命するのは法人トップと監事のみ」という重要な位置付けだ。「少なくとも1人は常勤に」となり候補者選びに苦戦した大学も目立った。また東京大学など5法人で必須となった「運営方針会議」に対し、監事は新たにけん制機能を発揮するため、活躍する場面が増えてきそうだ。(編集委員・山本佳世子)
国立大は法人化から20年経つが近年、組織的対応をすべき案件がさらに増えている。研究の不正防止や安全保障貿易管理などが一例だ。その中で政府は、大学の裁量拡大とガバナンス(統治)強化をセットで進めている。学長の不正や法令違反に対処できるよう、学長選考会議を「学長選考・監察会議」に変更。監事には学長の問題案件を同会議へ報告する役割が追加された。
監事は通常、1期4年で1国立大学法人に2人(統合による1法人複数大学では増員)だ。大規模大学の多くは常勤を置くが非常勤のみの大学も少なくなかった。2023年秋以降に常勤化が目立って進められ、今秋に新任の常勤監事が誕生する大学も多い。
監事の適任者は、大学の組織業務に精通する学長経験者などが理想。だが年齢制限にかかりやすい。経営の観点から大学に詳しいビジネスパーソンも候補だが「企業の組織運営の知見はあまり役に立たない。1期4年の最初の2年は、大学を知ることで精いっぱいだ」とある企業出身の監事は指摘する。
会計監査の点から会計士も多く、リスク管理に向いた弁護士も見られるが、非常勤が普通だ。このため文部科学省は人材不足を踏まえて、従来の基準を変更。「常勤監事による民間企業の社外取締役の兼業を認め得ることとする」とした。
また国際卓越研究大学の議論から生まれた運営方針会議にも関わる。中期目標・中期計画や財務計画の決定もする重要な同会議は、5法人で10月から順次、設置される。「トップ(学長など)の一部機能を移した同会議が、しっかり動いているか監事が見る」(文部科学省・国立大学法人支援課)ようになる。より重要になる監事が注目されそうだ。