研究開発者の「ジョブ型雇用」、積極的な業種・消極的な業種
日刊工業新聞社は研究開発(R&D)アンケート(有効回答219社)を実施した。アンケートでは、研究開発者の採用について聞いている。その回答について考察した。
研究開発者の設問は今回、初めて「研究開発者を含む技術系採用で、ジョブ型雇用やそれに類する手法を導入しているか」を尋ねた。有効回答197社のうち「している」が34%、「していない」は55・3%、「検討中」は10・7%となった。専門人材に対して職務内容を明確にしたジョブ型雇用の導入が話題になっているが、全体ではまだ主流とはいえない状況だ。
業種別にみると約半分と多いのは「計測・制御機器」「産業機械・造船・車両」「自動車・部品」など。機械系が積極的なほか、「化合繊・紡績・アパレル」が5社中4社と多い。対して各業種1―2社と少ないのは「鉄鋼・非鉄金属」「ビール・食品」「電力・ガス」だった。
続いて「ジョブ型雇用などをしている」と答えた67社に、「志望者にはどのような選択肢があるか」を聞いた。その結果、「職種(研究、開発、技術営業など)」が89・6%と多くを占めた。次いで「部門・部署(技術別、事業別)」が59・7%。これに「勤務地」の25・4%が続き、「製品・サービス」は14・9%と少なかった。
研究開発では理工系の専門の学びが重要で、「研究者」「技術者」と特定して採用する職種別が大半だ。技術内容がより明確な部門・部署での採用も6割と半分超。学生も確実な仕事内容を求める人が増えていると聞く。
四つの選択肢すべてに対応している企業は三菱電機、シスメックス、日立ハイテク、コニカミノルタ、日本ガイシ、東レなど。これらの企業は、個人のやりがいを重視するZ世代の就活生に、明確なメッセージを出しているといえそうだ。
以降は例年の定番質問だ。研究開発人員の採用しやすさ(有効回答199社)で、「難しくなっている」は63・8%で3・2ポイント増え、「変わらない」は35・2%と4・2ポイント減。「しやすくなっている」は1%だ。
理由(自由筆記)では、半導体や人工知能などニーズが高まっている領域で、難しいとの答えが目立つ。「依然として難しい」という表現もある。
もっとも、向こう数年の研究開発人員数(同197社)は、「増やす」が35・5%で5・9ポイント減。「横ばい」が36・0%で1・7ポイント増の微増。「未定」は27・4%で3・7ポイント増と、1年前の減から今回、増に転換。「減らす」は2社だった。
研究開発人員の確保の手法(同196社)は、最多が「中途採用の拡大」で78・6%。次いで「新規採用の拡大」62・2%。これに「研究部門間での配置転換」57・1%、「働きやすさの向上」54・6%、「社内の配置転換」42・9%、「外国人人材の活用」36・7%、「その他」8・7%。22、23年の調査と大きくは変わらない結果となった。