ブラックマス回収…VOLTA、茨城でリチウム電池リサイクル開始
VOLTA(静岡県富士市、今井健太社長)は、リチウムイオン電池(LiB)をリサイクルする茨城工場(茨城県ひたちなか市)を9月に本格稼働する。LiBからレアメタル(希少金属)を含むリサイクル材料「ブラックマス」を回収。本社・富士工場、富士宮工場(静岡県富士宮市)と合わせたブラックマスを含む原材料の月産能力は600トンとなる。ブラックマス中のレアメタルをリサイクルする湿式精錬の実証も検討する。
VOLTAはエンビプロ・ホールディングスのグループ企業。LiBは電動車(xEV)の普及や再生可能エネルギー用蓄電池として世界的に需要が増加しており、材料のレアメタルの回収・リサイクルは資源の有効利用につながる。茨城工場は敷地面積が約1万5000平方メートル、延べ床面積は同8500平方メートルで、LiBからブラックマスを回収する。
破砕・選別の処理量は1時間当たり1・5―2トン。破砕・選別ラインのほか、原料の回収フレコンごとに局所集塵機を置いて粉塵対策を施し、ブラックマスの自動サンプラーも設置した。月400トンの原材料から、同200トンのブラックマスを回収できる。静岡県の2工場と合わせ、ブラックマス月300トンを回収する。
また、今春に茨城工場内に設立した子会社J―Cycleに、三井物産とシンガポールの電池リサイクル企業が出資を計画している。2024年度中にLiB正極材からブラックパウダーを回収し、東南アジアなど海外への輸出事業を開始する見通し。
これを踏まえ、茨城工場では湿式精錬によるレアメタル回収の実証事業も検討する。VOLTAによると、日本国内でブラックマスからレアメタルを回収する取り組みを事業化した例はない。
同社はブラックマス生産工場の全国展開と併せ、電池の個別回収から放電、解体、電解液除去、破砕選別、分析、湿式精錬のリサイクル一貫体制を構築。リサイクルのトレーサビリティーも確立していく。