政府事業に採択、2億円獲得…金沢大VCがベンチャー起業前支援で出した成果
金沢大学100%子会社のベンチャーキャピタル(VC)、ビジョンインキュベイト(金沢市、松本邦夫社長)は起業前からの大学発ベンチャー(VB)支援で成果を出した。5月設立の自動運転車開発のムービーズ(同市)で、VCのキャピタリストが共同代表に就任。7月に政府事業に採択され、約2億円を獲得した。ビジョンインキュベイトのファンドからの年内出資を検討する。年末に目標30億円でファイナルクローズ予定のファンドに弾みが付きそうだ。
近年、国の認定を受けたファンドに対して国立大学が出資する「認定ファンド」の仕組みが動いている。東京農工大学、金沢大、東京工業大学がこの仕組みを活用している。
金沢大は同大が集めた寄付金を原資に、ビジョンインキュベイトを2023年8月に創業。11月に1号ファンドを10億円超で設立した。大学はファンドへの出資者でもある。出資額は非公表。
ビジョンインキュベイトの松本社長は再生医療の大学発VBで上場したクリングルファーマの創業メンバーの一人。金沢大の特任教授と副学長を務めており、VCの社長は金融業界出身者が多い中で異色だ。しかし同社は、技術を持つ大学の研究者と視線を合わせ、“ビジョンをインキュベーションする”伴走を重視する。
ファンドからの投資は2件を実施済みだが、起業前からの支援はムービーズが第1号だ。その結果、経済産業省の23年度補正予算による「モビリティDX促進のための無人自動運転開発・実証支援補助金」事業に採択された。大学と密接なVCが、設立2カ月のVBの大型資金獲得を実現した点が注目される。
日刊工業新聞 2024年08月14日