きさげ加工・研磨の力触覚投影…東北大、熟練技継承へシステム開発
東北大学の和賀正宗大学院生と昆陽雅司准教授らは東北大ベンチャーのAdansons(仙台市青葉区、石井晴揮社長)などと共同で、きさげ加工や研磨などの手作業の力触覚を測定して表示する技能伝達システムを開発した。振動と力を測り、その履歴をプロジェクターで投影する。体感を視覚的に捉えられ、言語化しにくい技能を伝えやすくなる。
作業中の振動を手首の腕輪型センサーで測り、かかっている力を作業面の下に配置したフォースプレートで測る。フォースプレートでは荷重中心の位置と力の大きさが求まる。力は法線方向と接線方向に分けて記録でき、このデータをヒートマップとして投影して作業中にリアルタイムで可視化する。
きさげ加工では刃先に一定の力をかけても表面のわずかな凹凸で削れ具合が変わる。これは振動として捉えられる。腕輪型センサーでは振動の計測と提示の両方が可能。振動を人間が感じやすい周波数に変換して提示する。入力と出力で周波数が異なるためセンサーと振動子がハウリングを起こさない。
作業を撮影しておくと、身体の動きと加工面への力のかかり具合、手にかかる振動を記録し再生できる。訓練として自分の作業を確認したり、熟練者の作業を記録して新人に模擬体験させたりする用途を想定する。
研磨や切削を手作業で仕上げる際、その感覚を言葉で説明することが難しかった。デジタルに追体験できると技能者を育成しやすくなる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業で実施した。
日刊工業新聞 2024年08月20日