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装置メーカー4社が上方修正…半導体投資の回復鮮明も、「AI頼み」続く

半導体投資の回復が鮮明だ。5月までに2025年3月期連結業績予想を公表していた大手半導体装置メーカーの中で、東京エレクトロンなど4社が業績予想を上方修正した。生成人工知能(AI)のブームを受け、ロジックやメモリーの先端品を中心に受注が伸びたためだ。一方、産業機器向けなどは在庫調整が長引き、デバイスごとに投資回復の濃淡がある。25年もこの傾向は続きそうで、半導体投資は「AI頼み」の状況だ。

業界では半導体投資の回復時期は「24年後半」という意見が大半だったが、想定以上に生成AI関連の需要が強いことから業績予想の上方修正に動いた。

東京エレクトロンは25年3月期連結業績予想を5月公表時点から売上高で4・5%、営業利益では7・7%引き上げた。河合利樹社長は「顧客の投資計画の前倒しに加え、AI関連のロジックとメモリーでの追加投資があった」と上方修正の要因を説明した。25年3月期連結決算は売上高や営業利益などで過去最高を見込む。

アドバンテストも4月公表の予想から売上高で14・3%引き上げた。複雑なAI関連の半導体が増え、テスト需要の急速な伸びを見込む。グループ最高経営責任者(CEO)のダグラス・ラフィーバ氏は「定量的には言えないが、市場はアップサイクルに入っている。1年で止まるとは思えない」と自信を見せる。そのほか、通期予想を上方修正したSCREENホールディングス(HD)と芝浦メカトロニクスもAI需要の恩恵を受けた。

また、「スマートフォンやカメラなどの動きが出ている」(半導体商社)と民生品向けでも回復が見られる。

一方、ここ数年市場をけん引してきた中国向けの割合は低下する。東京エレクトロンは「4―6月期がピークと見ている。産業機器など成熟世代への投資は一巡した」としている。KOKUSAI ELECTRICは中国の需要は今後数年続くとみるが、輸出規制などのリスクを勘案し、下半期はシェアが低下すると想定する。塚田和徳専務執行役員は「輸出規制などがなければ、通期予想が上振れる可能性がある」と展望を述べた。

一見好調に見える半導体投資だが「AI以外に投資をけん引するアプリケーションはない」(業界関係者)との声も聞かれる。半導体投資は「AI頼み」の状況がしばらく続く。


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日刊工業新聞 2024年08月20日

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