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ファナック、ファイバーレーザーの新工場に100億円投資

板金切断や溶接向けで需要伸びる。古河電工との合弁会社で
ファナック、ファイバーレーザーの新工場に100億円投資

左から、柴田古河電工社長、稲葉ファナック社長

 ファナックの稲葉善治社長と古河電気工業の柴田光義社長は8日、日刊工業新聞などの取材に応じ、ファナックが100億円を投じ栃木県壬生町にファイバーレーザー発振器などの生産する新工場を建設することを明らかにした。発振器の生産能力は月400台を計画する。新工場では両社が折半出資するFFレーザ(山梨県山中湖村)が発振器に組み込む基幹部品も生産する。出力3キロワットの発振器に換算して月産300台分、部品3万個の能力を確保する。

 ファナックは数値制御(NC)装置などの壬生新工場計画がある。今後のファイバーレーザー市場の拡大を見込み発振器工場の追加建設を決めた。2017年10月の稼働を予定する。延べ床面積が3万2000平方メートルの工場となる。

 ファイバーレーザーは高速加工、省エネルギーといった特徴があり、板金の切断や溶接向けで需要が増えている。発振器はレーザ―加工機や溶接機などに搭載されるユニット。ファナックが世界シェア首位級の二酸化炭素(CO2)レーザー発振器は厚い板金切断では優位性があるが、全体としては「ファイバーにかなりの部分が代わっていく」(柴田古河電工社長)とファイバーの伸びしろは大きい。

 さらに板金切断や溶接だけでなく、金属3Dプリンターといった積層造形や熱処理などに「応用が広まっていく可能性がある」(稲葉ファナック社長)とみている。両社は2015年7月、基幹部品のレーザーダイオードモジュール(LDM)の開発と製造、販売を手がけるFFレーザを設立し、同分野に参入した。

基幹部品の生産開始


 ファナックと古河電気工業が2015年7月に折半出資で設立したFFレーザ(山梨県山中湖村)は、ファイバーレーザーの基幹部品の製造を始めた。ファナック本社工場内に製造ラインを設け、出力3キロワットの発振器換算で月産20台分の能力を確保した。16年度は半期ごとに1ラインずつ追加し、計3ラインに増強する。

 8日、日刊工業新聞などに工場を公開した(写真)。FFレーザが製造を始めたのは、レーザーダイオードモジュール(LDM)と呼ばれる部品。約300平方メートルのクリーンルーム内に、古河電工が開発した装置8台、ファナックのロボット9台などを設置した。

 投資額は数億円で、生産能力は月2000個。従来、手作業だった工程をロボットに置き換えるなど、ファナックの自動化技術を多く採り入れ、1ライン当たりの作業員を2人に抑えた。

 ファイバーの中心に光を通すようにする「調芯」工程では、複数の微小なレンズやミラーを自動で組み込む。レンズは、最も小さいもので長さ4ミリメートル、厚さ0・5ミリメートル。西川祐司FFレーザ社長は「自動化により、高品質と高い信頼性のLDMを安定供給できる」と自信をみせた。
2016年4月9日日刊工業新聞電子版
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
古河、富士電機、富士通、ファナックへとつらなる日本ではあまりないカーブアウトの成功例。

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