茨城に「海リゾート」、ひたちなか・大洗が地域一体で
茨城県が洗練されたリゾートづくりを目指している。県内外から観光客が訪れるひたちなか市や大洗町を対象にした地区構想を立ち上げ、地元市町や関係団体と協議会を結成。定期的にイベントを開くほか、協議会として周遊バスを運行するなどして地域活性化を促す。県では「同地域の求心力の高まりに呼応して、企業投資も活発」(菊池正宏政策企画部地域振興課ひたちなか整備室長)とし、地域住民とともに観光産業を盛り上げていく構え。(茨城・石川侑弥)
「ひたちなか大洗リゾート構想」は、地域の特色である“海”に宿泊や飲食、スポーツ、趣味などのコンテンツを掛け合わせた地区構想。それぞれの観光資源を一体化し、観光客を誘致する。ひたちなか大洗リゾート構想推進協議会参加の各組織・団体を中心に、イベントや施設整備を進める。事業化はせず、関係団体の共通認識として構想を共有する。
30日から大洗町で始まるカジキ釣りの国際大会も、同構想に関わるイベントの一つだ。国内外からゲストも呼び、3日間で釣れた重量などの総合点を競う。2023年は39隻約210人が参加し、計8本のカジキを釣り上げた。
現在、国内で外国人が釣りをする際、法令で一部が制限される。そのため、菊池室長は「規制緩和で実現した国内でも珍しい取り組み」と独自性を強調する。周辺地域では、大会時期に合わせて地元飲食店がカジキ料理を提供する催しも開き、さまざまに楽しめるよう工夫する。
関東最大規模の面積を持つアクアワールド茨城県大洗水族館(大洗町)も、3月にミズクラゲ水槽を更新するなど観光客誘致に余念がない。プロジェクションマッピングを使った幻想的な演出で、来館者を魅了する。23年度には計120万人以上が訪れ、地域観光の中核を担う。
季節の花きが咲き誇る国営ひたち海浜公園(ひたちなか市)でも、茨城県が主導する観光促進イベントを実施。会員制交流サイト(SNS)上でフォトコンテストを開き、個人が撮影した花畑風景の投稿を通じ、その魅力を拡散する。
同地域には、新鮮な海産物が食べられる那珂湊おさかな市場(ひたちなか市)や大洗サンビーチ海水浴場(大洗町)なども立地する。県の調査によると、22年の観光客数は大洗町が県内1位、ひたちなか市が同2位。累計759万人が訪れた。
既に多くの観光客を集客できている一方で「観光消費額が少ない」(菊池室長)のが課題だ。茨城県はアクセスの良さなどから首都圏の観光客の割合が高い。自家用車で特定の観光地だけを目指して日帰りで訪れる人が多く、全体的な消費につながりにくい。22年は同県を訪れる観光客の87・5%が日帰り客だった。宿泊を伴う観光で、複数スポットの周遊を促す。
ひたちなか大洗リゾート構想推進協議会は23年10―12月、地区内の各観光スポットを周遊するバスを運行した。24年10月には国営ひたち海浜公園と大洗駅(大洗町)間を40分間で結ぶ予定で、周遊しやすさを確保する。またアクアワールド・大洗では、毎週土曜日18―20時に夜間営業している。同経営企画課の杉浦里紗主任は「生物のさまざまな姿を見てもらえる。近隣施設に宿泊して来館する観光客も多い」と手応えを見せる。
宿泊施設の整備も進む。グランピングが楽しめるグランマーレ茨城大洗(大洗町)が22年4月にオープンしたほか、大洗ホテル(同)では客室やロビーを更新し、11月上旬に完成予定だ。リゾート構想の進行度について県の大井川和彦知事は「3合目」と位置付ける。官民連携のリゾートづくりがさらに加速しそうだ。