ニュースイッチ

一時1100円超上昇…株乱高下、背景にあった失敗

「利上げ否定」発言で持ち直し
一時1100円超上昇…株乱高下、背景にあった失敗

日経平均株価の終値は3万5089円62銭だった(7日午後、東京都中央区)

7日の日経平均株価は前日から引き続き激しく値が動いた。取引開始直後は前日比で900円超下げる場面もあったが、日銀の内田真一副総裁の“ハト派”発言が伝わると急速に持ち直し、一時、1100円超上昇した。終値は前日比414円16銭高の3万5089円62銭だった。

内田日銀副総裁は同日、北海道函館市で開いた金融経済懇談会で「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と明言。市場では「日銀の利上げへの過度な警戒感が後退した」(野村証券の神谷和男ストラテジスト)。

朝方の日経平均は前日の大幅高の反動もあり、主力株を中心に戻り待ちの売りが先行していた。だが日銀のウェブサイトで懇談会のあいさつ内容が公表された直後から雰囲気が一変。外国為替市場ではドル円が一時1ドル=147円台後半まで3円近く円安ドル高方向に振れ、日本株の買い戻しに弾みがついた。銀行や保険など金融株を中心に上昇したほか、市場予想を上回る四半期決算や自社株買いを発表した個別銘柄の物色も活発だった。

「自律反発は終了局面。上昇・下落のどちらに行くかはっきりするのはこれから」(神谷氏)。相場のボラティリティーは高止まりしており、リスク回避の売りが引き続き出やすい状況にある。

日刊工業新聞 2024年08月08日
志田義寧
志田義寧 Shida Yoshiyasu 北陸大学 教授
日銀は4月の展望レポートで「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」との見解を示していた。つまり利上げ自体は既定路線だった。では、なぜここまでマーケットの振幅が大きくなったのか。その背景には、日銀の「市場との対話」の失敗がある。6月会合後は執行部の講演がなく、国会も閉会していたため、金融政策の考え方を伝える機会は限られていた。そうした中、足元では弱めの経済指標が目立っていたため、市場では「経済・物価の見通しが実現していくとすれば」の前提条件は成立していないと判断する参加者も少なくなかった。日銀が事前の情報発信から読み取れない行動をとれば、その行動をスクープした報道機関もリークや癒着が疑われる。日銀には、より丁寧なコミュニケーションを求めたい。

編集部のおすすめ