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中小の貢献目立つ…日本企業のSBT認定、1100社を超えた背景事情

入札優遇・補助制度が後押し

国際組織「サイエンスベースドターゲッツ(SBT)イニシアティブ」から、自社の温室効果ガス(GHG)排出削減目標が「パリ協定」達成に貢献するとして認定を受けた日本企業が1100社を超えた。国別では最多だ。また製造業の認定が多く、全体の7割を中小企業が占めるのが日本の特徴となっている。認定を優遇する入札や補助金制度が増えており、目標設定を後押ししているようだ。(編集委員・松木喬)

環境非政府組織(NGO)の世界自然保護基金(WWF)ジャパン(東京都港区)の羽賀秋彦氏の集計によると、7月8日時点で1121社の日本企業が認定を受けた。世界全体の2割に相当する。2位は英国で909社、3位には米国の609社が続いた。また、認定を目指すと宣言した「コミット」を含めると日本は1203社で2位。コミットの割合が多い英国が1223社と首位だった。

日本の1203社のうち、893社(74%)が中小企業だった。中小企業は世界全体では37%にとどまっており、日本と海外で傾向が異なる。また業種別でみると日本は電機・機械が259社(日本全体の21%)、建設・エンジニアリングが130社(同10%)と上位。電機・機械は世界全体の認定・コミット数の半数近くを日本勢が占めた。

羽賀氏は「日本はサプライチェーン(供給網)の裾野が広く、大企業を起点に中小企業の認定が増えている」と解説する。取引先にSBT認定水準の目標設定を勧める大企業が増えていることも、中小企業が認定を取得する動機となっているようだ。

また、羽賀氏が日経平均株価を構成する225社を調べたところ、半数近くの112社が認定かコミットを表明していた。日経平均の構成銘柄は大企業が多く、産業全体に影響を与えている可能性がある。

一方、世界全体ではコンサルティング会社の認定が最多だった。英国はコンサル会社が279社(英国全体の22%)と圧倒的に多く、米国も173社(米国全体の16%)と最大だ。企業の脱炭素戦略の立案を支援するコンサル会社が自らSBT認定を取得し、企業に支援サービスを営業している構図がある。

SBTはNGOのWWFや国連グローバルコンパクトなどの4者が、企業にパリ協定達成に向けた行動を促そうと始めた。日本では、環境省が2017年度からSBT認定の支援事業を展開。栃木県小山市も、4月から地元の中小企業を対象にコンサル費を補助する事業を始めた。

認定を優遇する動きもある。国土交通省が入札参加時に加点しているほか、経済産業省もものづくり補助金で補助額を増額する条件の一つにしている。SBT認定には申請費用が必要で、企業によってはコンサル費も支払っている。コストをかけて認定を取得した企業が報われる優遇策の広がりに期待したい。

日刊工業新聞 2024年08月06日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
中小企業は審査料(認定料)が大企業よりも安く、スコープ3の目標設定が要件ではありません。「自社の目標が世界基準」と社内外に訴求しやすいです。一方、「SBTがビジネスに必須」「SBTがビジネスチャンス」など、認定を煽るのはどうかと思います。SBT認定がなくても、目標を設定して活動している企業も多いです。

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