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日銀の国債買い入れ、26年1―3月に半減3兆円…識者の見方は?

日銀の国債買い入れ、26年1―3月に半減3兆円…識者の見方は?

日銀は追加利上げも決定した

日銀は31日の金融政策決定会合で長期国債の買い入れ額を現在の月6兆円程度から2026年1―3月に同3兆円程度まで半減させる計画を決めた。原則として四半期ごとに4000億円ずつ減額する。8月から減額を実施する。日銀が国債の保有量を減らし、量的引き締めに移る。決定会合では追加の利上げも決めた。政策金利である短期金利を現在の0―0・1%から0・25%程度に引き上げる。

日銀が買い入れを減額することで、現在日銀が保有する600兆円規模に上る国債は26年にも7―8%減少する見通し。長期金利が急上昇する場合には機動的に買い入れ額の増額などを実施する。国債市場の安定に配慮し、柔軟性を確保する。

日銀は25年6月の金融政策決定会合で中間評価を行う。中間評価では「今回の減額計画を維持することが基本となる」とした上で「国債市場の動向や機能度を点検した上で必要と判断すれば計画に修正を加える」とした。26年4月以降の国債の買い入れ方針も示す。

決定会合後の会見で植田和男総裁は国債の買い入れ減額による金利上昇圧力について「ストック効果が少し減るが、残高の減少は2年先でも7―8%程度で大したものではない」と見方を示した。

日銀は7月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」も公表した。24年度の生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)上昇率の見通しを前年度比2・5%に下方修正した。4月時点の見通しは同2・8%だった。政府による電気、ガス代の負担緩和策が影響した。25年度は4月時点の同1・9%から同2・1%に上方修正。前年度の反動が出る見込みだ。26年度は4月時点の見通しを据え置いた。今後も日銀が掲げる2%目標に近い水準で推移する見通しだ。

植田総裁は「経済物価の見通しが実現していけば、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整する」と今後の方針を語った。

真の狙いは円安対策/第一生命経済研究所経済調査部・首席エコノミスト 熊野英生氏

利上げの真の狙いは円安対策だと想像する。2023年7月のドル円の為替レートは、1ドル=140円台前半だったが、足元は150円台前半と、まだかなり円安だ。政府が介入を続ける状況も日銀の今回の判断に影響を与えたのだろう。

今金融政策決定会合では3月の0―0・1%から0・15%しか上げていない。実体経済への影響はほぼないだろう。3月から7月までと同じ間隔で利上げを行うとすると、次の利上げのタイミングは12月の金融政策決定会合になる。さらに0・25%程度引き上げ、政策金利は0・5%になると予想する。0・5%からは中小企業金融に影響が出てくる水準だ。企業活動に対するインパクトを注視する必要がある。(談)

年内に追加利上げも/SOMPOインスティチュート・プラス・エグゼクティブ・エコノミスト 亀田制作氏

利上げを見送る可能性の方がわずかに高いと思った。今金融政策決定会合の焦点となった利上げと国債減額の二つの情報を市場が一度に消化することは難しく、不確実性が高まるため、国債減額だけに絞ると予想した。だが、おそらく国債減額の方は、市場参加者との対話を通じて不確実性を招く懸念は少ないと捉え、利上げも行えると判断したのだろう。

0・25%程度の政策金利は、実体経済に非常に大きなマイナスの影響を与えるほどの水準ではない。引き続き緩和的な金利水準のため、企業活動などへの影響は現時点では大きくないと見る。日銀は、引き続き政策金利を引き上げる方針を明確に示している。2024年内に追加利上げがあってもおかしくない。(談)

日刊工業新聞 2024年08月01日
志田義寧
志田義寧 Shida Yoshiyasu 北陸大学 教授
最近、金融政策決定会合の度に日銀によるリークが疑われるようになっている。今回もNHKと時事通信、日本経済新聞が会合前日から当日にかけて追加利上げの検討について相次いで報道、結果はその通りとなった。ニュースイッチを運営する日刊工業新聞も当日の紙面で、国債買い入れ減額について「向こう1年から2年程度かけて現状の6兆円程度から3兆円程度に減額する内容を視野に入れる」と決定内容を事前に報じていた。(日刊工業新聞7月31日付1面「国債買い入れ減額、具体化検討 日銀」) X(旧twitter)で「日銀andリーク」で検索すると、日銀によるリークと断定する見方が多く、情報管理の杜撰さを指摘する声や犯人探しをするポストも目につく。では、日銀は本当にリークをしているのか。筆者は北陸大学の教員になる前、2020年まで報道機関で日銀を担当していたが、筆者の経験から言えば、一般の人が想像するようなリークはないと断言できる。おそらく、一般の人が想像するリークは、政策を事前に市場に織り込ませるために陰でコソコソと教えるというものだろうが、日銀はそんなことをしなくても、会見や講演、レクなど考え方を伝える手段をたくさん持っている。リスクを冒してまで、報道機関を使って織り込ませる必要はまったくない。日銀担当記者は決定会合前に、景気の現状や先行きに対する見方、リスク等について、かなり細かく取材をしている。日銀は会見や『経済・物価情勢の展望』(展望リポート)で蓋然性の高いシナリオやリスクを公表しており、記者はそのシナリオに変化はないのか取材を通じて確認しており、その積み上げが報道につながっている。植田和男総裁はマイナス金利の解除を決めた3月会合の会見で「今回の政策変更に先立って、仮に政策変更があるとしたらどういう考え方で行うかについては、様々な情報発信をしてきた」と指摘。その上で「発信した情報をもとに、報道された各社がそれぞれの見方を示されたものと理解している」とリークを否定しており、今回の会見でも「ルールの中で情報管理をきちんとしている。時々出る報道は観測報道であると理解している」と述べている。リーク説が一人歩きすることで、取材に制限がかかる事態に発展しないことを願うばかりだ。

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