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人口が神戸を抜いた福岡市。商議所会頭が語る、強みと課題

福岡商議所・礒山誠二氏に聞く
 2015年の国勢調査で人口が神戸市を抜き、訪日外国人の消費が関連業者を潤すなど“元気な都市”を体現する福岡市。その元気をいかに維持発展させるかが大きな課題だ。福岡商工会議所は幅広い連携でその課題に取り組もうとしている。九州全体を見据える礒山誠二会頭に今後の取り組みを聞いた。

 ―15年度を振り返っての感想は。
「『博多どんたく港まつり』や『Food EXPO』などイベントがうまくいった。特に食関係ではBツーB(企業間)とBツーC(対消費者)の商談会や『うまかもん市』で実績が出ている。一方で創業支援や事業承継支援では課題もある」

 ―16年度の地域の景気をどう見ますか。
 「福岡だけみれば悪くないが全体的に見ると地方都市が厳しい。インバウンド(訪日外国人)の効果を福岡都市部の周辺や他県にまで広げなければならない」

 ―そのためにどのように取り組みますか。
 「県外を含めた連携に力を入れ、交流を増やしたい。インバウンド対応は連携効果が発揮できる。例えば宿泊。福岡市内でホテルの予約が取りにくいとなれば周辺や県外がある」
 「国際会議や展示会などMICE誘致でも連携できる。福岡市は何十年も前からアジアを見据えており、国際会議場などを整備している。長期的視点で準備してくれた先輩方に感謝したい。望むのは富裕層が長期間泊まれるグレードの高いホテル。中心部の交通渋滞も課題だ」

 ―食での連携についての考えは。
 「福岡には観光資源にもなっている食べ物が多いが、それがあることにあぐらをかいてはいけない。食では九州ブランドをいかに作っていくかに取り組む。知恵を出してうまく作った良い例が辛子めんたいこ。もともとなかった物から名物として作り上げたのは素晴らしいことだ」
 「海外マーケットは簡単でないが、九州で連携して作ったものを沖縄経由でアジアにも売りたい。そのためにも作る人と売る人とのマッチングが必要になる」

【記者の目/多様性ある地域の魅力生かせ】
 一極集中と言われる福岡市の活況を周辺に広げることは発展の継続に欠かせない。福岡県だけでも北部と南部の産業構造は大きく違い、九州全体ではなおさら各地の商工会議所の考え方はさまざま。その多様性は連携の幅の広さなどで生かせる。会頭は福岡県商工会議所連合会と九州商工会議所連合会の会長でもある。三つの役割を生かして多くの連携を生み出してほしい。(文=西部・関広樹)
日刊工業新聞2016年4月7日 中小企業・地域経済面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
交通インフラだけ見ても、九州における陸海空の主要拠点(博多駅、博多港、福岡空港)を擁する福岡市は、どうしても人が集中する。九州が一体的になって発展を目指すなら、もっと抜本的な機能分担をするべき。 例えば福岡空港は過密状態で滑走路を増設するが、完成予定は2024年度とまだ先。一方で本社移転やMICE振興を推進するならビジネス客の利便性向上は不可欠。いっそのこと福岡空港に発着するLCC(格安航空会社)を、佐賀空港や北九州空港にまわしてしまえば、福岡空港の混雑緩和とインバウンドの流動性向上につながるはず。もちろん2次交通の整備・充実とセットですが。

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