進化する観光バス、関西でインバウンド需要狙う
関西の交通事業者が、デジタル技術を活用したりインバウンド(訪日外国人)向けコースを設けたりすることでバスのサービス向上を図っている。JR西日本や奈良交通(奈良市)は仮想現実(VR)コンテンツなどを用いた観光バスを運行する。奈良交通と京都市交通局は主要バス停などに語学力のあるコンシェルジュを配置し、インバウンドにバスの乗り方やルートなどを案内する。観光やインバウンドの需要が回復してきた中、バス利用者を増やし地域活性化につなげる。(東大阪・市川哲寛)
JR西はVRなどを用いたクロスリアリティー(XR)バスの運行を福井県で始めた。3月に北陸新幹線が乗り入れた福井駅、恐竜博物館(福井県勝山市)、一乗谷朝倉氏遺跡博物館(福井市)、芦原温泉(福井県あわら市)をそれぞれ結ぶルートで運行する。車内をディスプレーで覆い、恐竜や歴史ドラマ、ノスタルジックなドラマなどで仮想空間体験を提供する。新幹線で福井を訪れた観光客にバスでも楽しみつつ観光地を行き来してもらう。
奈良交通はNTTグループのデジタル技術を活用する。定期観光バスではNTTビジネスソリューションズ(大阪市北区)の技術を用い、文化財や観光地などのVRコンテンツを視聴しながら現地を訪れるコースを設けている。神社仏閣を通常とは異なる角度で見られるようにして新たな発見につなげるなど、高付加価値型観光サービスに位置付ける。今後もコースを増やす方針だ。
貸し切り観光バスではNTT西日本の技術で1人のバスガイドが複数台のバスを同時案内するシステムを導入した。基地局から同時配信し、ガイドと乗客がモニター越しにコミュニケーションを取る。バスには大学生などの交流ナビゲーターが同乗、目的地まで案内する。
1日には定期観光バスに同社初のインバウンドコースの運行を始めた。2025年3月まで週2回運行する。プロの通訳案内士が同行、世界遺産登録の東大寺と春日大社などを巡り、英語版おみくじなどが体験ができる。
ケイ・エス・エバーグリーン観光(大阪市西区)などインバウンド専門の貸し切りバスを展開するところは多いが、定期観光は少ない。認知度向上などの集客策を今後練る。
奈良交通はJRと近鉄の奈良駅、奈良公園(奈良市)内のバス停にコンシェルジュを配置、利用できる乗車券の種類などを案内する。スムーズな乗車でバスの遅延低減を図り、オーバーツーリズム対策とする。
京都市交通局は主要なバス停や観光地にコンシェルジュを配置、モデルコース紹介などを行う。6月には京都駅と観光地を結ぶ特急バスの運行を始めるなど路線やダイヤを改編した。
利用客の満足度を高め、観光地のイメージアップにつなげるべく、各社が工夫を重ねている。