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伊藤忠・三菱商事…大手商社が衣料リサイクルで攻勢、アパレルの環境対応後押し

伊藤忠・三菱商事…大手商社が衣料リサイクルで攻勢、アパレルの環境対応後押し

伊藤忠はリサイクル原料を使ったTシャツを傘下のファミリーマートで販売している

大手商社が衣料のライフサイクルの環境負荷低減で攻勢をかけている。伊藤忠商事は使用済み混合素材を分子レベルなどに分解して原料に再生する取り組みを国内外で拡充。三菱商事は二酸化炭素(CO2)由来の原料を使った繊維のサプライチェーン(供給網)を海外の再生可能燃料大手などと共同で構築した。高度なリサイクルや生産工程の低炭素化を推進し、大量廃棄問題などを抱えるアパレル業界の環境対応ニーズを取り込む。(編集委員・田中明夫)

環境省の調査によると、家庭や売れ残った商品などとして事業所から排出される衣類は年間約73万トンで、このうち約64%はリユース・リサイクルに回らず廃棄される。衣類の原料調達から店頭に届くまでのCO2排出量は1着当たり約25・5キログラムとされ、500ミリリットルペットボトル約255本を製造する際の排出量に相当する。資源の有効活用が課題だ。

こうした中、伊藤忠はレゾナックと共同で2023年に繊維などのリサイクル事業を国内で開始した。廃棄物の広域回収特例などを使って集めた衣類やプラスチックを高温でガス化し、化学品原料のアンモニア生産やCO2の医療用ガスなどに活用。参画企業は旭化成ホームズなど約10社に拡大している。

また伊藤忠は帝人や日揮ホールディングスと共同出資会社「RePEaT」(リピート、東京都千代田区)を設立。ポリエステル(PET)繊維を分解して染料などを除去し、高品位PETに再生する技術のライセンスを提供している。提供先第1号の中国の浙江建信佳人新材料(ジャーレン社)は、このライセンスを使って工場のリサイクル能力を今後数年で現状比6倍の年間18万トンに増強する計画だ。

リピートの林進平副社長は「繊維リサイクルで地産地消のモデルを広げていきたい」とし、人口が増えるアジア新興国のほか米欧や日本の企業へのライセンス提供も狙う。伊藤忠の衣料や化学品のサプライチェーンと、帝人や日揮の技術力を生かして市場を開拓する。

豊田通商は繊維リサイクルの共創枠組み「パッチワークス」を23年に設立。下着ブランド「ワコール」やリサイクル業者ナカノ(横浜市南区)などを巻き込み、廃繊維から再生繊維への循環を後押ししている。

三菱商事はフィンランドの再生可能燃料大手ネステなどと共同でPETの低炭素サプライチェーンを7月中に稼働させる。バイオ原料のほか、三菱商事や千代田化工建設などが新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援事業で製造するCO2由来パラキシレンを投入してPETを生産。ゴールドウインがアウトドア用品などの素材に活用する。

商社の産業ネットワークと政府支援の連携により衣料ライフサイクルの環境対応が進みつつある。一方、6月には経済産業省が衣料業界向けに環境配慮情報の開示指針を策定した。欧州連合(EU)は5月に未使用の繊維製品の廃棄禁止規則を採択するなど、一段の環境負荷低減が求められている。官民連携を深めて、繊維流通の高度化を推進する必要がありそうだ。

日刊工業新聞 2024年07月23日

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