キンドリル・AWS…「生成AI」商戦、データ基板で攻勢
活況な国内IT需要に向けて、外資系ITベンダー各社が攻勢をかけている。注目は生成人工知能(AI)商戦。これまで概念実証(PoC)をめぐる先陣争いが中心だったが、ここにきてAIの価値の源泉となる「データ・プラットフォーム(基盤)」の重要性があらためて問われている。キンドリルジャパン(東京都港区)、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)ジャパン(東京都品川区)の外資系大手2社の動向を探る。(編集委員・斉藤実)
生成AI活用への期待は高まる一方だが、解決すべき課題は数多い。キンドリルジャパンの榎木泰平理事は「課題の裏にアプリケーションと生成AI間のデータ連携や、データ環境の可視化と管理などの問題が潜んでいる」と指摘する。
同社にとっての主戦場は大規模な基幹システムの運用管理。基幹データの安全性を守りながら、生成AIを用いたアプリを効果的に活用できるプラットフォームを築くことで課題解決に挑む。
具体的には大規模言語モデル(LLM)の導入や運用を効率化するための手順やツールを「LLMOps(エルエルエムオプス)」としてフレームワーク(枠組み)化し、生成AIアプリの稼働を管理できるダッシュボード機能なども実装する予定。IT運用を自動化するサービス統合基盤「キンドリル・ブリッジ」との連携がカギとなりそうだ。
一方、「生成AIモデルでは入力データの質が重要だが、多くの企業はデータのサイロ化が進み、必要なデータが統合できていない」というのは、AWSジャパンの滝沢与一執行役員だ。
AWSジャパンはクラウド移行を支援する日本独自の施策「ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX)」の最新版のメニューの中で「データ・プラットフォーム・モダナイゼーション・アセスメント」と呼ぶ、データ活用支援サービスを提供している。
データドリブン(駆動型)経営や、自社データを生成AIで最大限活用することを目指す顧客が主な対象。AWSの専門チームが既存のデータ基盤を分析し、モダナイゼーション(最新化)や改善後の姿を提案する。
滝沢執行役員は「クラウドの利点を享受するには単純な移行でなく、システムのモダン化の検討を効果的に行うことが必要」と語る。
ITXはこれまで企業向けに展開してきたが、6月に公共版「ITXフォーPS」を追加した。公共向け専用の豊富なサービスに加え、企業向けパッケージと同様に、システムのモダン化や生成AI活用など、きめ細かく対応する。
システムのモダン化に当たり、次期システム検討の早い段階でモダン化による費用対効果の検証や、実現性の検証を行う。併せてデータ・生成AIの活用も提案し、公共分野における生成AIの代表的なユースケース(活用例)の検討をサンプルコードや実装支援テンプレート(ひな型)を用いて支援する。
外資系2社とも生成AI商戦に向けて、それぞれの強みをどう生かすかが注目される。