性能10倍以上…東大など、ナノ構造化シリコンで熱電発電素子
東京大学の柳澤亮人特任助教、野村政宏教授らは、ナノ構造化シリコン薄膜を使った熱電発電素子を開発した。従来のシリコン薄膜による発電素子に比べ、性能を10倍以上に高め、シリコンウエハー上に半導体プロセスで大量に生産可能な熱電発電素子として世界最高の性能を達成したという。
研究グループは、熱の流れを制御するナノ構造を用い、大面積で大量生産が可能なシリコン熱電発電素子を開発。素子の面直方向に温度差がある場合、素子の内部に熱が流れ、ナノ構造化シリコン膜に生じた温度差によって電圧が発生し、センサーを駆動するための電力が得られる。
発電部となる厚さ約1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のナノ構造化シリコン膜には、直径260ナノメートル(ナノは10億分の1)程度の円孔を形成。電気の流れを保ちつつ熱の流れを抑え、熱電発電素子の性能を高めた。
小さな温度差でもセンサーを駆動する電力が得られるため、毎年1兆個規模の大量のセンサーを社会が消費する「トリリオンセンサー社会」を支えるエナジーハーベスト技術になると期待される。物質・材料研究機構、ドイツのフライブルク大学、セイコーフューチャークリエーション(千葉県松戸市)などと共同で研究開発した。
日刊工業新聞 2024年7月11日