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部品と要素技術が世界を変えるー未来を形作るモノづくりイノベーションとは

カーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向かってアクセルを踏む産業社会において、世界を変えるコアテクノロジーとイノベーションとは何かー。この解の一つとして発信されるのが、今月24日から日本能率協会主催により開かれる展示会「TECHNO-FRONTIER(テクノフロンティア)2024」だ。モータ、駆動、制御、計測、熱対策やEMC・ノイズ対策、そしてつながる工場を実現するデジタル技術まで、普段はモノづくりの黒子として表からは見えづらく、かつ縁の下で支える、多彩な要素技術の最先端が東京ビッグサイト(東京都江東区)に集積する。部品と要素技術が主役となり、次代を切り拓くイノベーションを起こすことを目指した企画も多く盛り込まれ、活発なビジネスマッチングが期待されている。

「TECHNO-FRONTIER2024」の開催概要はこちら

産業機械の脱炭素化を後押しするIE5モータ

今回の注目の一つが、数ある構成展の中でも、テクノフロンティアの原点ともいえるモータ分野における、最新省エネルギー型「IE5」規格モータのトレンド発信だ。

気候変動による影響や、人口増大が進む地球社会において、エネルギー利用のあり方を抜本的に見直すことが急がれている。特に産業機械や装置の動力源となるモータの消費電力は、日本の総電力消費量の55%を占めるほど大きく、さらなる効率化が課題となっている。ここに大きく切り込むため、従来以上に効率を追求したモータとインバータ制御の導入拡大が必要とされている。

モータの効率レベルは国際電気標準会議(IEC)で規定されており、世界各国で普及する製品を決める効率規制が行われている。現在、日本で普及する汎用モータは、2015年に開始した規制の「IE3」レベル。しかし、主要モータメーカー各社は2段階上となる“ウルトラプレミアム効率”と呼ばれる、「IE5」規格モータや専用インバータなど省エネを追求したラインアップをそろえてきている。会場内の主催者企画「メカトロニクス企画展示コーナー」では、三菱電機東芝産業機器システム、安川電機、ABBといった世界を代表するモータメーカーによるIE5モータや、ポンプメーカーの荏原製作所による自社開発IE5モータを組み込んだポンプを一同に展示し、電力使用量の削減を実現する最新技術を披露する。また、初日の24日10時15分から、IE5モータの世界市場動向、技術トレンドと活用方法などを深掘りするセッションが行われる。モデレータは、モータ技術変遷を知り尽くした百目鬼英雄東京都市大学名誉教授が担当する。

ABBはIE5モータをはじめとした省エネ提案を積極化する(写真は2023年7月のテクノフロンティア)

部材や部品の高度化を学ぶ分解展示に中国EVのZeekrが登場

テクノフロンティアにおける名物コーナーとなるのが、世界で熾烈な開発競争をくり広げる電気自動車(EV)や最新デバイスなどの紹介。それらを分解展示し、キーコンポーネントなどを分析し、部材や部品の高度化を学ぶことができる。近年では、米テスラや中国・比亜迪(BYD)など最新EVメーカーの分解展示と解説を行い、人気を集めてきた。今年は、中国の吉林汽車グループの新興EVメーカー「Zeekr(ジーカー)」の分解展示に加え、搭載されているインバータなどパワーエレクトロニクスシステムについて、名古屋大学の未来材料・システム研究所の山本真義教授が解説する。

また、中国の大手スマートフォンメーカーである小米科技(シャオミ)が3月28日にEV進出の第一弾として発売し世界で注目される「SU7」が展示される。日本能率協会産業振興センターものづくり支援グループの宇佐美 裕一グループ長は「この車は展示会終了後に山本教授のリードで解体され、後日にもセミナー解説を予定している」とし、さらなる企画を描く。

また、電気系ものづくりYouTuberのイチケンさんが、オシロスコープメーカーや試験用電源メーカーのエンジニアらと対談をくり広げる、イチケンラウンジも注目スポットとなる。イチケンさんは今年、テクノフロンティアのアンバサダーにも就任しており、動画撮影を含め、さまざまな発信を行う。

シャオミのSU7が会場で展示される (6月上旬に日本へ運ばれてきた時の様子)
イチケンさん(左)のアンバサダー就任式で盾を贈呈

パーソナルEV開発始動

会場では、主催の日本能率協会が展示会や技術セミナーでの発信からさらにもう一歩踏み込んだプログラムに挑戦する。オープンイノベーション実践と日本のモノづくりへの問題提起のため仕掛けてきたあるプロジェクトの片鱗が見えてくる。サイバー・フィジカル・エンジニアリング技術共同組合などのメンバーとともに取り組む、パーソナルEVのフルデジタル開発プロジェクトで、その進捗が最終日の26日に主催者セミナー企画で報告される。オランダのカーバー社が手がけるパーソナルEVモデルをデータベース化したものを活用する。新モビリティのコンセプト案などを発表し、会場でさらなる参加企業の呼びかけも行われる。

テクノフロンティアに集う技術は、カーボンニュートラルなスマート工場で、効率的な生産ラインを構築し、人やロボットがそれぞれの役割を果たすモノづくりに集約されていく。ただ、このスマートファクトリーの将来を見据えたとき、欧州を中心に進展する、工場内のデータ連携や概念の普及など、データスペースの運用において、日本は大きく遅れていると言われる。同プロジェクトを担当する日本能率協会ものづくり支援第1チームの飯田拓巳リーダーは「デジタル開発を積極化させている世界の潮流を学び、危機感も会場で共有するとともに、日本のすりあわせ技術など生産技術の要素を掛け合わせて新ビジネスモデル構築に役立てていきたい」と、狙いを語る。

なお、同プロジェクトは2025年のテクノフロンティアではプロトタイプの発表を目指しており、展示会発のオープンイノベーションとして機能拡張を目指している。

<開催概要>
 TECHNO FRONTIER2024
 https://www.jma.or.jp/tf/
 会期:7月24日―26日
 場所:東京ビッグサイト(東京都江東区)
 主催:日本能率協会
 TECHNO-FRONTIER 2024 | 日本能率協会 (jma.or.jp)

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