1軸回転で緩急推進…筑波大が開発した「イカロボット遊泳機構」の機能
筑波大学の佐生礼大学院生と望山洋教授は、イカのように推進するソフトポンプ遊泳機構を開発した。一つの回転軸でイカを模した緩急のある動きが作れる。スクリューのように水草などの浮遊物が巻き付く心配がない。イカの動きを模倣した高度な疑似餌装置や水質浄化ロボットなどに発展させていく。
ぼんぼりのように二つの輪を複数の帯でつないだ骨組みをねじって膨らませたり、縮んだりさせる。シンプルな1軸の回転運動で体積が大きく変わりポンプとして機能する。イカなどの頭足類が水を吹き出して急進する機構を再現した。
体積変化は膨張時を100%とすると、収縮時は64%まで縮む。縮むと断面積が小さくなるため水からの抗力が2・8ニュートンから0・49ニュートンと5分の1になる。そのために急加速、急停止の不連続な動きが可能になる。実験では停止状態から1秒間で秒速150ミリメートルまで急加速し、2・5秒後には停止できた。指などが入り、切断されるリスクも小さい。
ジェット推進の逆止弁や無限回転するスクリューを用いると浮遊物が絡まって動けなくなる課題があった。スクリュー一つで急停止することは難しい。新機構は水中遊泳の頑健性が高く、生き物のような緩急のついた動きを再現しやすい。
現在は機構の概念実証(PoC)を終えた。今後用途に合わせた開発を進める。水質浄化フィルターを備えた汚染除去ロボットや、イカのように動く疑似餌ロボを想定する。動物愛護の観点から動物園や水族館ではエサをただ与えるのではなく、野生環境に近い狩りや遊びを与える必要性が出てきている。安価で簡便な機構で生き物らしい動きを再現できると動物たちに与えやすい。
日刊工業新聞 2024年07月02日