リコーと東芝テック、複合機エンジン強化の新会社はモデルケースになるか
リコーと東芝テックの共同出資会社「ETRIA(エトリア)」が1日始動した。新会社は複合機などの共通エンジンの開発・生産を一貫して担い、競争力の強化や開発・生産体制の効率化につなげるのが狙いだ。日本企業が世界シェアの約8割を握る複合機業界だが、コロナ禍を機に加速したペーパーレス化などを背景に印刷需要は縮小が見込まれる。新会社が業界のモデルケースの一つとなるのか、取り組みに注目が集まる。(新庄悠)
エトリアの出資比率はリコーが85%、東芝テックが15%。A3レーザー複合機シェアは世界で2割超となり、規模の優位性を生かした共通エンジンの設計・開発や部材の共同購買・調達によるコスト競争力の向上が見込める。共通エンジンの展開は2025年度を目指す。
両社が共通化を目指すのはエンジンや複合機の前後工程を担う周辺機器といったハードウエアで、これらを制御するソフトウエアや各種アプリケーションは両社のブランドで展開する。販売・サービスについても従来通りの顧客接点で展開する方針だ。中小企業をはじめとするオフィスに強いリコーと、流通・製造・小売業の現場に顧客基盤のある東芝テックでは競合する部分は少なく、棲み分けができる。
新会社設立にあたり1日、横浜市内で記者懇談会を開いたエトリアの中田克典社長(リコーコーポレート専務執行役員)は「利益を生むのはソフトウエアだが、イノベーションを起こすのはハードウエアだ。ハードウエアメーカーとしての成長を必ず実現させる」と意気込みを語った。その上で「(将来的に)営業利益率5%維持を目指す」と述べた。
事務機器(OA)業界では富士フイルムビジネスイノベーション(BI)とコニカミノルタも複合機・プリンター分野で業務提携に向けて協議を進める。7―9月をめどに原材料や部材の調達で連携するための共同出資会社の設立を目指す。どの企業と、どのように手を組むのか―。OA各社の将来を左右する協業が動き出している。