播種作業1工程で3条分…愛知県が実証する「大豆の高速種まき機」の効果
愛知県が湿害による大豆の出芽不良という県産農作物の課題に対し、地元の農機メーカーとの新型農機の開発で解決を図っている。現在、大豆の種まき作業を迅速にすることで出芽不良を回避する高速播種機を開発中。播種などの作業を1工程で3条分を同時に行う試作機を製造し、その実証実験を安城市と刈谷市で始めた。実際の生産現場での性能評価を通じて製品化につなげる考えだ。(編集委員・江刈内雅史)
愛知県の水田農業では、コメ・麦・大豆を2年3作のブロックテーション(農地を複数ブロックに分け、各ブロックに作付けする作物を順番に替える)の農法が定着している。そのうちの大豆は気象条件の影響を受けやすく、単収の年次変動が大きいことが課題。特に愛知県では播種時期が梅雨と重なるため、湿害による出芽や苗立ちの不良、他作物との作業時期の競合や長雨による播種遅れが生じやすく、生産者から安定生産に向けた技術の開発が求められていた。
そこで愛知県農業総合試験場(愛知県長久手市)と鋤柄農機(同岡崎市)が、2023年度から高速播種機の共同開発を始めた。
同機は前作の小麦刈取後の耕起していないほ場で、耕起、土を高く盛る畝立て、播種の三つの作業を同時に時速4キロメートル程度の高速で行う。これにより、土壌表面に水がたまりにくくなり、生育初期の湿害を回避する。また、通常は播種作業とは別に実施するほ場の耕起・整地作業を省けるため、労働時間も短縮できる。
同年度には1工程で2条の作業を同時にする2条タイプを試作。その結果、強粘質の土壌で土壌水分が高い場合には高速性がやや低下するが、畝立性能は良好で、降雨による湿害を回避でき、生育・収量の向上効果を確認した。そこで、24年度は県内生産者に広く普及している3条タイプを試作した。
今後、実証では性能評価のほか、大豆の収穫量調査や生産者が求める機能の確認なども行う。また、大豆の主産地である西三河地域は強粘質で固く締まりやすく、畝立てがしづらい洪積土壌が広がる。こうした地域の特性に対応するため、「ロータリーの爪の形状を工夫し、粘土質の土でも畝立てしやすくする」(愛知県農業総合試験場作物研究部)技術の開発・改良を進め、2―3年後の製品化を目指す。
鋤柄農機の鋤柄忠良社長は「皆さんが梅雨の時期の播種に苦労している。この技術が普及すれば顧客にも喜んでもらえる」と製品化に期待を寄せる。