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作業時間15%短縮…遠隔建機、AI技術で操作支援の可能性

神戸大学の横小路泰義教授と京都工芸繊維大学の永野光准教授らは、人工知能(AI)技術を用いた遠隔建機の操作支援技術を開発した。何度か遠隔操作すると軌道を学習し、学習軌道に沿うように補助力をかける。作業時間が15%短縮した。就労環境の改善と作業の効率化につながる可能性がある。

力覚アシストが操縦を誘導

油圧ショベルで土砂を掘削してダンプに積み込む作業をAIで支援した。油圧ショベルは6自由度の力触覚アームで操作する。まず地面を掘削して旋回し、積み込む作業を繰り返す。この動作データをAI技術で掘削と旋回、積み込み、静止の四つに分類し、リアルタイムにどの動作中か推定できるようにした。

次に掘削などの動作ごとにショベルの軌道データを解析する。毎回同じ軌道を通る部分は強い力で学習軌道に引き寄せ、軌道がバラつく部分は引き寄せる力を弱くする。すると定型の動きは力覚支援で毎回同じ軌道に収束し、多様性のある動きは拘束が弱く自由に動かしやすくなる。

12人のシミュレーション実験では作業時間が15%短縮され、1度の掘削ですくい取れる土砂量が5%増えた。今後、ベテランと新人など、他人の操作データを使った支援で作業効率が向上するか検証していく。

建機を遠隔操作できると過酷な現場でなく、空調の効いた室内で作業できる。働き方の改善につながるほか、女性や海外人材など就労者の幅が広がる。海外から遠隔操作すると日本での夜勤を現地の日中に行え、鉱山などの24時間操業が可能になる。作業の効率化と運営の柔軟化につながる。


日刊工業新聞 2024年07月01日

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