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米アップルが日本投入、ゴーグル型端末「ビジョンプロ」は普及するか

米アップルが日本投入、ゴーグル型端末「ビジョンプロ」は普及するか

「ビジョンプロ」は機能拡張などを通じて使い勝手を高める

米アップルはゴーグル型の端末「ビジョンプロ」を日本国内で28日に発売した。ビジョンプロを頭に装着すると、レンズ越しに見える空間に画面が表示され、視線や手、声などでアプリケーションを操作できる。機能拡張や他製品との連携を通じて使い勝手を高める一方、競合他社のゴーグル型端末と比べて高価格な点が普及に向けてのネックとなりそうだ。企業を含む多様な消費者への提案や、ゴーグル型端末ならではの用途の開拓がカギとなる。(阿部未沙子)

ティム・クック最高経営責任者(CEO)が開発者向け会議「WWDC24」で「アップルビジョンプロ向けの新しいコンテンツと新機能の提供を続ける」と語ったように、最新の基本ソフト(OS)の提供を始める方針を示した。2次元(2D)の写真に奥行きを持たせることなどができるようになる。

日系メーカーもビジョンプロに対応した製品の開発に取り組む。例えば、キヤノンは年内にもビジョンプロで視聴できる3次元(3D)映像に対応した3D映像撮影用レンズの発売を目指す。 

利便性向上により、市場拡大も見込まれる。矢野経済研究所(東京都中野区)が2023年7月時点でまとめたヘッドマウントディスプレー(HMD)とスマートグラスを合わせたクロスリアリティー(XR)機器の国内出荷台数調査によると、25年には22年実績比約2・7倍の101万9000台と予測している。

一方、米国メディアがビジョンプロの次期モデルの開発中止を報じたように、安価な機種への経営資源の集中を余儀なくされているようだ。オムディアの早瀬宏リサーチマネージャーは「用途がまだはっきりしていない」点がビジョンプロを含むゴーグル型端末の共通課題と認識する。

さらに、販売拡大の障壁となるのが価格だ。ビジョンプロは消費税込みで59万9800円から。他方、米メタのゴーグル型端末「クエスト3」は同7万4800円から。早瀬リサーチマネージャーはビジョンプロについて「値段とパフォーマンス(性能)を踏まえると消費者が使うのではなく、開発用や業務用で使う端末ではないか」とみる。

仮想現実(VR)拡張現実(AR)のコンテンツ開発などを手がけるフィグニー(東京都豊島区)の里見恵介社長もビジョンプロの価格を踏まえ「消費者には普及しないのでは」と指摘する。ただ「企業では業務の一部として使うケースが出てくる」(里見社長)とし、倉庫で部品を探す際などに使えると想定する。

また早瀬リサーチマネージャーはビジョンプロに適したソフトウエアの必要性を挙げ、「アップルがビジョンプロの提供を始めたのは、ソフト開発を進めてほしいという狙いもあるのではないか」とみる。消費者のみならず、企業を含めた幅広い顧客への訴求に加え、使い方の提案がビジョンプロを含めたゴーグル型端末の浸透に不可欠だ。

日刊工業新聞 2024年06月28日

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