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-計測器 Now-「モビリティー電動化」最前線で支える、菊水電子工業

-計測器 Now-「モビリティー電動化」最前線で支える、菊水電子工業

右から 茂戸藤寛氏、松林成学氏、峯松育弥氏、安達雅和氏

菊水電子工業は交流と直流の安定化電源や電子負荷の新製品を投入している。高機能化と大容量で小型・省スペース、低ノイズなどの性能に加え、きめ細かいサポートからモノづくり産業を支えている。自動車の電動化を背景にパワーエレクトロニクス機器の需要が高まりを見せる中、電磁環境適合性(EMC)の評価が求められる。KEC関西電子工業振興センター(KEC)は、EMCに関する最新の国際規格に適合した新試験棟を竣工させた。評価試験に重要とされる安定化電源や電子負荷連において、直流と交流の両製品で菊水電子工業の製品がKECの新試験棟に導入された。菊水電子工業とKECに採用背景や製品の優位性などを聞いた。

KEC関西電子工業振興センター試験事業部事業部長 峯松育弥氏

―菊水電子工業に伺います。KECに採用された製品について教えてください。
 茂戸藤 交流の安定化電源は「大容量スマート交流・直流安定化電源PCR-WEA/WEA2シリーズ」、直流は「双方向大容量直流電源 PXBシリーズ」が採用された。KECに設置したPCRーWEA/WEA2シリーズは三相400ボルト入力モデルで、12台を並列運転し360キロボルトアンペアまで大容量定格出力ができる。PXBシリーズは一つの筐体(きょうたい)で、カ行と回生動作が可能である。4台の並列運転で80キロワットを定格出力できる。いずれも大容量ながら、当社の技術により小型で安定した性能を長時間提供できる。

―KECでは新たな試験棟が完成しました。
 峯松 KECはEMCと製品安全試験を行う第3者認定試験所として、充実した設備と施設から利用者の製品開発を支援している。特に電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)など開発に向け、急速充電器や、バッテリー充電に必要な機器「オンボードチャージャー(OBC)」など車載機器などのパワエレ機器は大電力化が進み、EMC試験の要望が高まっている。そこで関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)に、新たに10メートル法電波暗室2基(第15・16電波暗室)を持つ「けいはんな試験センターE3ラボ」の運用を4月より始めた。

第16電波暗室は、業界に先駆けて国際無線障害特別委員会(CISPR)による国際規格「16ー1ー4」で規定された最新の電波暗室の電波伝搬特性(NSIL:Normalized Site Insertion Loss)に適合した。これは、周波数帯30メガヘルツ(メガは100万)以下の磁界エミッション(EMI、放射または伝動によって発生源から伝ぱされた電磁エネルギー)に対応した。

菊水電子工業営業本部エグゼクティブエキスパート 茂戸藤寛氏

―安定化電源や電子負荷は、脱炭素社会実現に欠かせない計測器として重要です。
 峯松 この第16電波暗室の大きな特徴は、もう一つある。急速充電器やOBCなど車載機器に加え、太陽光発電用インバーター、自動搬送装置用非接触充電器などのパワエレ関連で、大電力が必要となる試験に対応した交流安定化電源と双方向電源を導入した。交流は最大で三相360キロボルトアンペア、直流は1500ボルトで80キロワットまでの大電力供給を実現した。

―菊水電子工業の強みとセールス施策について教えてください。
 茂戸藤 規格試験を行う機関に導入されることは、計測器市場では高い優位性を意味する。こうした中、KECには10年近く訪問。性能や機能の要求に応えるため常に情報をエンジニアと共有し、迅速かつ妥協することなく製品開発を進めてきた。国内と海外で販売展開する当社として、EMCに関する規格の要求事項を多く知るエキスパート企業である自負がある。また関西エリアに配置したセールスエンジニアが、顧客の場所にスピーディーに駆けつけてテクニカルな内容に対応する。

峯松 振り返ると、要求に対して諦める姿は見られなかった。高い技術力と情報、提案力、サポート力を背景とする熱意を感じた。

菊水電子工業ソリューション推進部SE課主任 松林成学氏

―導入された交流電源について教えてください。
 松林 大容量スマート交流・直流安定化電源PCRーWEA/WEA2シリーズは、大容量で小型、低ノイズである。定格出力6キロボルトアンペアモデルは6U(高さ約272ミリメートル)を実現しており、出力容量に合わせたシリーズをそろえる。容量の異なるモデルでも並列運転が可能な将来設計となっている。出力端子から発生するRMSノイズは0・25ボルト以下だ。

KEC導入モデルは並列運転により、定格出力が360キロボルトアンペア。交流の最大出力電圧は三相線間でRMS554ボルト。さらに交流電源でありながら、直流で0ー±452ボルトの電圧を出力できる。当社は「交流・直流」と称しており、長時間にわたり安定した性能を維持する。過度応答および立ち上がり、立ち下がり時間は40マイクロメートル秒と高速で、シーケンス機能により交流電源として系統電圧のさまざまな変化を自由に再現できるほか、直流電源としてスイッチング方式の直流電源では不可能な高速な電圧変化を高品位の波形で実現できる。

大容量で安定した出力とシーケンス機能により、系統電圧のさまざまな変化を自由に再現。また出力に接続した負荷からの逆潮流電力を構内回生し再利用できる回生機能(100%回生、逆潮流時間制限無し)を搭載している。

菊水電子工業応用製品開発部応用開発一課主任チーフエキスパート 安達雅和氏

―直流電源について教えてください。
 安達 双方向大容量直流電源PXBシリーズも、小型大容量ながら低ノイズであり業界トップクラスとなっている。3U(高さ約128ミリメートル)サイズで20キロワット出力が可能で、出力に大きな容量負荷が接続されても発振せずに高い安定性を誇る。

20キロワット単位で電力容量の拡張が可能で、並列台数10台(200キロワット)までが仕様となっている。ラックに搭載した場合は1本のラック(幅570ミリ×奥行き1000ミリ×高さ1900ミリメートル)で200キロワットまで対応可能で、ラック内にて排気対策を行い単機と同じく動作上限温度は50度Cを実現している。また市場では200キロワット以上の要求も多く、これに対応するため500キロワット(25台並列運転)まで定格出力にて既に検証済みである。KECには4台並列で80キロワット構成として導入している。

―KECでは試験が始まりました。
 峯松 交流と直流の安定化電源は電波暗室の設備として設置スペースが限られている。安定した性能、大容量なのにコンパクト、加えて菊水電子工業のサポート力を優先した。また交流電源逆潮流100%の性能が発揮されていて、これまで電気エネルギーを熱変換するための大型の抵抗負荷を用意する必要があったが、回生機能により不要になり、利用者から高い評価を得ている。直流の設備は大容量ニーズに応える投資を視野に160キロワットにまで対応する。

―自動車など電動化に動きがあります。
 茂戸藤 脱炭素社会に向けて自動車だけでなく、トラックやバス、さらには航空機や船舶、建機・農機が電動化の流れになる。これらモビリティーの電動化に伴うEMCの新規格が要求されてくると考える。そのための試験の重要性は、KECの存在感と共に高まりをみせると予想できる。ともに日本のモノづくりを支えていきたい。

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