生成AIの流行、半導体検査装置に好影響の背景
広域帯メモリー向け攻勢
生成人工知能(AI)の流行が、半導体検査装置各社に好影響を及ぼしている。生成AIにはDRAMを複数積層する広帯域メモリー(HBM)が使われるが、従来のDRAMに比べ複雑なためテスト負荷が高く、検査装置の重要性が高まっている。今後も市場拡大が見込まれており、各社は巨大需要獲得を目指し、狙いを定める。(小林健人)
半導体検査装置大手のアドバンテストは「HBMは世代交代が早い。(半導体の技術進化に合わせて)より付加価値の高いシステムを導入することで収益性の改善につなげる」と意気込む。
台湾の調査会社、トレンドフォースによると、HBMの販売単価は通常のDRAMの数倍にもなるため、その分、検査装置のニーズが高まっている。アドバンテストの競合、米テラダインもAI関連の需要獲得を目指しており、日本法人の梅永敬社長は「HBMに加え、付随するネットワーク関連の需要も狙う」と話す。
検査装置各社が力を入れる背景には、DRAM大手の積極的な研究開発や投資の動きがある。韓国のサムスン電子はDRAMを12層重ねた最新世代の「HBM3E 12H」を開発した。同じく韓国のSKハイニックスは米国でHBMの後工程を担う工場を建設し、28年後半にも稼働を始める。
また、HBMの好影響はハイエンドの検査装置だけではない。メモリー向けプローブカードでシェアを持つ日本マイクロニクスは「22年でDRAM全体の10%程度だったHBM関連の受注が、23年7―9月期から増えてきた」と話す。特に、同社がシェアを持つサムスン電子向けの受注が伸びたという。
今後についても「テスト負荷が大きいため、装置台数が出る。(長期的には)非常にプラスだ」と展望を話す。日本マイクロニクスは旺盛な需要を取り込むため、すでに生産能力の拡充を決めている。
AI向け半導体の需要が拡大するのに伴い、検査精度を維持しながらテスト時間を早める必要がある。生成AIの普及は検査装置の進化を促す契機になる。
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