物流効率化へ着目…役員クラスの担当者「CLO」に求められる役割
進む職能定義、普及に弾み
物流効率化に向けて一定規模以上の荷主に「物流統括管理者」選任を義務付ける法案の閣議決定を受け、チーフ・ロジスティクス・オフィサー(CLO)などが注目されている。役員クラスの物流担当者がなぜ必要で、どんな役割が求められるのか。物流改革の担い手となるCLOの職能を定義し、普及させようとする動きも始まっている。(梶原洵子)
「CLOの役割は“外交”だ」。法案作成に携わった経済産業省商務・サービスグループの中野剛志消費・流通政策課長兼物流企画室長は、フィジカルインターネットセンターが開催したCLO協議会の発足シンポジウムでこう説明した。
物流は商品を売る企業(発荷主)と買う企業(着荷主)の商取引契約の一環で決まり、生産計画や販売戦略なども関係する。企業の物流担当の社員や物流事業者だけでは効率を改善できない。そこで役員権限を持つCLOの設置により、部署間や企業間の壁を乗り越えようというわけだ。
共同配送などをしたい物流事業者や荷主企業は、これからはCLOに相談すれば良くなる。「CLOの選任で物事が動き出すと期待している」(中野課長)。
野村総合研究所の藤野直明シニアチーフストラテジストは、「物流担当役員の役割は、物流を含む全業務プロセスの設計・運用・改善や物流ネットワークの再構築だ。責任と権限は能動的に、戦略的な視点から検討すべきだ」と指摘する。
物流担当役員は企業にとって非常に重要な役割だ。藤野氏によると、海外では近年、米アップルのティム・クック氏や米ウォルマートのダグ・マクミロン氏をはじめ、サプライチェーン(供給網)管理責任者を経て最高経営責任者(CEO)に就く例が少なくないという。
フィジカルインターネットセンターは、内閣府の物流に関する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)などを母体とする一般社団法人だ。ヤマト運輸やイオン、日清食品の役員などが参加するCLO職能検討会を開き、CLOの定義や役割を検討してきた。座長を務めた東京大学の川崎智也准教授は、CLOには経営者としての視点や能力が必要だと説明した上で、「全体最適のマインドを持つことが特に重要だ」と話す。
現在の日本のサプライチェーンは部署や個社の個別最適を追求した結果のため、これを乗り越えないと物流の課題は解決できないからだ。
なお、物流統括管理者の選任や物流に関する中長期計画の作成が義務付けられる“特定荷主”の基準はこれから審議される。経産省の中野課長は「目安として全貨物量の半分程度をカバーしたい。三千数百社程度が特定荷主になるとみている」と話す。物流の問題を解決に導く、約3000人のCLOの誕生が期待される。