社長は新入社員にどんなメッセージを発したか
「バッターボックスに立ち思い切ってスイングを」(トヨタ社長)。日産は「GT―R」を一足早くお披露目
大手企業が新規学卒者を迎えて入社式を開いた。好調な業績を背景にトヨタ自動車やパナソニック、野村ホールディングス(HD)などは採用を拡大。鴻海入りを決めたシャープや不適切会計に揺れた東芝も入社式を開いた。中国経済の減速や世界経済の不透明感が増す中、将来を担う若手に期待をかける。
トヨタ自動車が愛知県豊田市の本社で開いた入社式には2239人の新入社員が出席。2000人超えは2009年度以来。
豊田章男社長は「『よしやるぞ』という今日この日の気持ちを忘れずにルーキーとして”バッターボックス“に立ち思い切ってスイングしてほしい」と訓辞。「過去に通用してきた成功体験や理屈だけでは今後の持続的成長は望めない」とし、「若い皆さんの今の感性や感覚を職場に吹き込み上司や先輩に刺激を与えてほしい」と呼びかけた。
パナソニックの新入社員は15年度比約60人増の669人。津賀一宏社長は「勇気を持って道を開き、社会の変化のスピードに遅れることなく前に進み、新しい風を吹き込む存在になってほしい」と激励した。
14年度まで数年間は採用を300人前後に抑えていたが、15年度から600人規模に増員。来年度も同規模の採用を続ける。
新日鉄住金の本社の入社式には前年比約90人増の341人の新入社員が出席。進藤孝生社長は「いろいろな国の人たちと仕事をする場面もある。異なる文化・価値観を理解するよう努めてほしい」とした。
同社は全国の各製鉄所でも入社式を実施。全体の新入社員は昨年比924人多い1813人で12年の合併後で最多となった。
野村HDはグループ全体で707人(前年比59人増)が入社。永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)は「皆さんもリーディングカンパニーに入ったと安心せず、自らの変革に挑戦してほしい」と激励。
三菱東京UFJ銀行の小山田隆頭取は「オープンな発想と行動力を存分に発揮し、新しい風を吹き込んでほしい」とした。
日立製作所は約650人が入社。東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)は「『モノ』ではなく、『コト』を追求されるようになってきた」と指摘し、「顧客のさらに先の顧客の考えをくみ取った提案が必要」と強調した。同社は事業体制を製品別のカンパニー制からビジネスユニット制に移行。「変化を感じるセンサーを常に磨いて」と呼びかけた。
グローバル競争が激しさを増す車業界の入社式でも各社のトップが新入社員を激励し、チームワークや顧客目線の大切さを訴えた。
日産自動車のカルロス・ゴーン社長は「今年最終年度になる中期計画の完遂に向けた取り組みを期待する」と話した。いつもは横浜市の本社ホールで開催するところを普段一般開放しているイベントスペースで挙行。夕方報道陣に公開した高級スポーツカー「GT―R」の新モデルを一足早く新入社員にお披露目し、車を身近に感じられる演出を施した。
「思い出に残る入社式を」というかけ声で若手社員が企画した今年の入社式は趣向を変えた。会場には、新入社員の手書きメッセージが書き込まれた電気自動車(EV)「リーフ」を展示、ゴーン社長は「(メッセージに書いた)チャレンジ精神を貫いてほしい」とエールを送った。
昨年の社長就任以来、「チームホンダ」を合言葉にするホンダの八郷隆弘社長は入社式でもこの合言葉を強調。「チームホンダの一員となった。ホンダの未来を切り開くのは皆さん自身だと銘記してほしい」と話した上で「”出る杭は打たれる“というが”出ない杭“に未来はない。自ら”出る杭“になって挑戦することを期待する」と鼓舞した。
スズキの鈴木修会長は「常識」「人のつながり」「グローバル化」「健康」など本質的な部分の大切さを強調。「苦労を克服した者が人生の勝者になる」と経験豊富な経営者らしい言葉を贈った。今回初めて全国の販売代理店の新入社員の入社式も合同で行い、「車の両輪のごとく製販協力してスズキを盛り上げよう」と激励した。
好業績がひときわ目立つ富士重工業だが吉永泰之社長は中期計画「際立とう2020」を引き合いに「”際立つ“存在になる目標を実現するのにまだ2―3合目」と気を引き締めた上で「際立つ未来を一緒に切り開こう」と話した。
「お客さまに愛され選ばれ続けるブランドを共に実現していこう」(小飼雅道マツダ社長)、「独りよがりのモノを作ってもそっぽを向かれる。”自己満足“ではなく”他己満足“が大事だ」(相川哲郎三菱自動車社長)と顧客目線を重視する訓示も目立った。
今年度にトヨタ自動車の完全子会社となるダイハツ工業の三井正則社長は「新生ダイハツを自分たちの手で進化させる。そんなやりがいのある使命を託されたのだと胸を張ってほしい」と、新生ダイハツ一期生となる新入社員に活を入れた。
<次のページは、苦境組>
トヨタ自動車が愛知県豊田市の本社で開いた入社式には2239人の新入社員が出席。2000人超えは2009年度以来。
豊田章男社長は「『よしやるぞ』という今日この日の気持ちを忘れずにルーキーとして”バッターボックス“に立ち思い切ってスイングしてほしい」と訓辞。「過去に通用してきた成功体験や理屈だけでは今後の持続的成長は望めない」とし、「若い皆さんの今の感性や感覚を職場に吹き込み上司や先輩に刺激を与えてほしい」と呼びかけた。
パナソニックの新入社員は15年度比約60人増の669人。津賀一宏社長は「勇気を持って道を開き、社会の変化のスピードに遅れることなく前に進み、新しい風を吹き込む存在になってほしい」と激励した。
14年度まで数年間は採用を300人前後に抑えていたが、15年度から600人規模に増員。来年度も同規模の採用を続ける。
新日鉄住金の本社の入社式には前年比約90人増の341人の新入社員が出席。進藤孝生社長は「いろいろな国の人たちと仕事をする場面もある。異なる文化・価値観を理解するよう努めてほしい」とした。
同社は全国の各製鉄所でも入社式を実施。全体の新入社員は昨年比924人多い1813人で12年の合併後で最多となった。
野村HDはグループ全体で707人(前年比59人増)が入社。永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)は「皆さんもリーディングカンパニーに入ったと安心せず、自らの変革に挑戦してほしい」と激励。
三菱東京UFJ銀行の小山田隆頭取は「オープンな発想と行動力を存分に発揮し、新しい風を吹き込んでほしい」とした。
日立製作所は約650人が入社。東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)は「『モノ』ではなく、『コト』を追求されるようになってきた」と指摘し、「顧客のさらに先の顧客の考えをくみ取った提案が必要」と強調した。同社は事業体制を製品別のカンパニー制からビジネスユニット制に移行。「変化を感じるセンサーを常に磨いて」と呼びかけた。
新入社員が手書きメッセージ
グローバル競争が激しさを増す車業界の入社式でも各社のトップが新入社員を激励し、チームワークや顧客目線の大切さを訴えた。
日産自動車のカルロス・ゴーン社長は「今年最終年度になる中期計画の完遂に向けた取り組みを期待する」と話した。いつもは横浜市の本社ホールで開催するところを普段一般開放しているイベントスペースで挙行。夕方報道陣に公開した高級スポーツカー「GT―R」の新モデルを一足早く新入社員にお披露目し、車を身近に感じられる演出を施した。
「思い出に残る入社式を」というかけ声で若手社員が企画した今年の入社式は趣向を変えた。会場には、新入社員の手書きメッセージが書き込まれた電気自動車(EV)「リーフ」を展示、ゴーン社長は「(メッセージに書いた)チャレンジ精神を貫いてほしい」とエールを送った。
昨年の社長就任以来、「チームホンダ」を合言葉にするホンダの八郷隆弘社長は入社式でもこの合言葉を強調。「チームホンダの一員となった。ホンダの未来を切り開くのは皆さん自身だと銘記してほしい」と話した上で「”出る杭は打たれる“というが”出ない杭“に未来はない。自ら”出る杭“になって挑戦することを期待する」と鼓舞した。
スズキの鈴木修会長は「常識」「人のつながり」「グローバル化」「健康」など本質的な部分の大切さを強調。「苦労を克服した者が人生の勝者になる」と経験豊富な経営者らしい言葉を贈った。今回初めて全国の販売代理店の新入社員の入社式も合同で行い、「車の両輪のごとく製販協力してスズキを盛り上げよう」と激励した。
好業績がひときわ目立つ富士重工業だが吉永泰之社長は中期計画「際立とう2020」を引き合いに「”際立つ“存在になる目標を実現するのにまだ2―3合目」と気を引き締めた上で「際立つ未来を一緒に切り開こう」と話した。
「お客さまに愛され選ばれ続けるブランドを共に実現していこう」(小飼雅道マツダ社長)、「独りよがりのモノを作ってもそっぽを向かれる。”自己満足“ではなく”他己満足“が大事だ」(相川哲郎三菱自動車社長)と顧客目線を重視する訓示も目立った。
今年度にトヨタ自動車の完全子会社となるダイハツ工業の三井正則社長は「新生ダイハツを自分たちの手で進化させる。そんなやりがいのある使命を託されたのだと胸を張ってほしい」と、新生ダイハツ一期生となる新入社員に活を入れた。
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日刊工業新聞2016年4月4日