電動化で巻き返しなるか…ホンダが投入、軽商用EVの性能
補助金活用で200万円以下
ホンダは13日、軽自動車の商用電気自動車(EV)「N―VAN e:(エヌバン イー)」を10月10日に発売すると発表した。補助金適用で全グレード200万円以下と購入しやすい価格帯に設定した。運輸部門でカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)が求められる中、EVへの期待は高い。軽商用車のシェアでダイハツ工業やスズキに水をあけられているホンダにとって、電動化をカギに巻き返しを図る。
「商用車でスタートダッシュを切る。軽自動車の量販価格帯での提供を実現することで、着実にEVの普及に貢献していく」。ホンダ統合地域本部日本統括部の高倉記行統括部長は13日の会見でこう力を込めた。
N―VAN e:は軽バン「N―VAN」がベース。荷室下に搭載した駆動用バッテリーを薄型化して低床・大空間を確保した荷室に加え、横・後ろの広い開口部により積み降ろしを自由にできる。最大積載量は300キログラム。モーター駆動による力強い走行性や加速性を備え、満積載時や上り坂でもすぐに加速できる。低振動・低ノイズで静粛性も高く、早朝や夜間でも静かな走行が可能となる。
安全面では軽商用バンとして国内初のサイドカーテンエアバッグを搭載。また国内の軽自動車として初となる衝突後ブレーキシステムを搭載し、多重衝突事故を防止する。
1充電走行距離は245キロメートル(WLTCモード)。夜間充電で都市部・郊外ともに最小限の充電回数で移動できる航続距離を追求した。独自のコネクテッド技術「ホンダコネクト」に対応。効率的に充電する機能をスマートフォンなどから遠隔操作できる。
計4タイプあり、消費税込みの希望小売価格は乗員4人の「e:L4」が269万9400円から、「同FUN」が291万9400円。乗員1人の「同G」は243万9800円から、乗員2人の「同L2」は254万9800円からに設定した。販売台数目標は公表していない。
ホンダは2040年にEVと燃料電池車(FCV)で世界新車販売100%を目標に掲げる。日本では26年までにEV4車種を投入する計画で、N―VAN e:を皮切りに電動化戦略を本格始動する。
ダイハツ・スズキ7割超 脱炭素以外の付加価値カギ
軽商用車ではダイハツ工業とスズキの2社で新車販売シェアの7割超を占める。「モデルのラインアップを順次拡充し、日本でEVナンバーワンというポジションを築けるようなところまで伸ばしたい」(ホンダの高倉統括部長)と新型車への期待は高い。
軽商用EVをめぐっては三菱自動車が23年12月に新型の「ミニキャブEV」を発売。11年発売の軽商用EV「ミニキャブ・ミーブ」をベースにモーターや駆動用バッテリーなどを刷新し、航続距離を180キロメートル(WLTCモード)に延ばした。同社の軽商用EVは日本郵便の配送用途などに採用されている。
日産自動車も三菱自からOEM(相手先ブランド)供給を受け、24年2月に「日産クリッパーEV」を発売した。
またダイハツとスズキ、トヨタ自動車の3社は、ダイハツの軽商用バン「ハイゼットカーゴ」をベースにした軽商用EVを共同開発中だ。ただ、ダイハツの認証不正問題が影響し、当初23年度中を予定していた導入時期は延期となっている。
日本自動車工業会(自工会)の23年度の「軽自動車の使用実態調査」によると、軽ユーザーでEV購入意向を持つのは約2割。価格に敏感な軽ユーザーに対し、価格や脱炭素以外の付加価値を提供できるかも軽商用EVの市場の広がりを左右しそうだ。
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