「磁力」世界記録の2倍以上…AIと研究者が共創したスゴイ「鉄系高温超電導磁石」
東京農工大学の山本明保准教授らは、鉄系高温超電導磁石の磁力を2倍以上に高めることに成功した。マイナス235度Cで電流を流すと2テスラ超の磁力を得た。多結晶材料であるため、セラミックス材料の製造プロセスを利用できる。医療用磁気共鳴断層撮影装置(MRI)や核磁気共鳴(NMR)などに提案していく。
人工知能(AI)技術のベイズ最適化と研究者による仮説検証の二つの開発アプローチを並走させた。データは共有してそれぞれ実験を繰り返す。AI主導では純粋に材料の電流特性を高めるように探索し、研究者は作りやすさなどの電流特性以外の数値で表現しにくい要素も勘案しながら探索した。
二つの材料を重ねて評価すると低温で2テスラ超の磁力を得た。世界記録の2倍以上に当たる。研究者製の材料は磁場がない条件で最高の電流が得られ、AI製の材料は磁場条件で最高の電流を得られた。個々の比較評価はしなかった。
AI製の材料は結晶粒界の間隔分布が二つの群に分かれていた。従来研究では見られなかった構造で、電流特性が高い原理を解明できるとブレークスルーになる可能性がある。
日刊工業新聞 2024年06月11日