ニュースイッチ

TDK・村田製作所は二桁増…電子部品大手の開発費、過去10年で最高になる理由

電子部品大手7社の2024年度研究開発投資の合計額が過去10年で最高となることが分かった。投資額は14年度比約2・2倍の7000億円を超える見通し。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)や次世代車「ソフトウエア定義車両(SDV)」など新たな潮流の広がりを踏まえ、大電流対応など車載領域の技術革新を加速。次世代の部品・製品を開発して将来の競争力の源泉を創出し、持続的な成長を目指す。

24年度の研究開発投資は7社中6社が前年度を上回る見通し。このうちTDKの24年度は前年度比16・5%増の2200億円と2ケタの増加を計画する。斎藤昇社長は「中期だけでなく、長期という意味で投資をしていく」と語り、中長期的な時間軸でイノベーションの創出に力を注ぐ考えだ。

同じく2ケタの増加率を計画する村田製作所は、24年度に前年度比10・2%増の1460億円を想定する。車を含むモビリティー向けの部品に重点配分するほか、積層セラミックコンデンサー(MLCC)といった部品や新規事業への投資も継続する。

一方、ミネベアミツミの24年度は前年度比5・5%増の450億円を計上。成長市場と位置付ける車載領域やデータセンター(DC)向け製品の研究開発に力を入れる。特に大電流に対応し、電力損失を抑制できるパワー半導体の研究開発を強化する。

アルプスアルパインは低収益事業の撤退など構造改革を進めつつ、24年度の研究開発投資は前年度から6・4%増やす方針。車載向け製品を成長市場と捉えて研究開発を増額し、快適な車内空間を構築する「デジタルキャビン」を含むモジュール・システム事業に研究開発費全体の約50%を充てる。

電子部品業界に詳しい佐渡拓実大和証券チーフアナリストは、電子部品大手が研究開発投資を増やす理由について「新たな成長市場に対して先回りをして開発する必要があるからだ」と分析。また「人件費の上昇に対応する狙いもあるのではないか」としており、研究開発費の増加は結果として優れた研究者の獲得にもつながりそうだ。

各社は大規模な研究開発投資を通じ、車載領域などで技術優位性を獲得し韓国や台湾など海外勢を突き放す構えだ。


【関連記事】 2024年「超モノづくり部品大賞」の応募受付を開始
日刊工業新聞 2024年06月11日

編集部のおすすめ