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日産が27-28年度に有償展開、自動運転サービスの現在地

日産が27-28年度に有償展開、自動運転サービスの現在地

横浜・みなとみらい地区の約10kmの区間をセーフティードライバーと遠隔監視のみで20分程度で自走した

日産自動車自動運転サービスの研究を着実に進めている。2024年度中に実証を開始、27―28年度に有償サービスを展開する計画だ。高齢化や人口減少による人手不足で“ドライバーレス”のモビリティーサービスへの期待は高い。政府も環境整備を進める。先進技術の社会実装に向けた取り組みが本格化していく。(編集委員・村上毅)

「ここまで来ているというのをお見せしたい」。日産の土井三浩常務執行役員総合研究所所長は開発中の自動運転車両を公開し、こう自信を示した。

電気自動車(EV)「リーフ」をベースにした実験車両では、車両の屋根や前後左右にカメラやレーダー、高性能センサー「LiDAR(ライダー)」など計30個のセンサーを搭載。半径150―160メートルにある車両や自転車、歩行者、信号などを確認し挙動を予測して高精度地図と照らし合わせて移動を判断する。

公道に入る際の一時停止や安全確認後の発進、直線での加速、対向車両や歩道を横断する歩行者を確認しての右折、路上駐車車両を確認しての停止・再発進など、運転手が操作しているかのような自然な運転を実現。日産グローバル本社がある横浜・みなとみらい地区約10キロメートルの区間を、セーフティードライバーと遠隔監視のみで20分程度で自走した。

日産では24年度中にミニバン「セレナ」をベースにした車両で実証を開始し、25―26年度に最大20台の車両を運行し日常的な自動運転サービスを提供する。27―28年度には地域拡大と安全性を検証し、オンデマンドの乗り合いシャトルとして有償サービスで提供したい考えだ。

EV「リーフ」をベースにした自動運転の実験車両

日本ではモビリティーサービスをめぐる課題も多い。利用者の減少や運転手不足で地方でバスの廃線が増加。タクシー運転手の平均年齢は上昇し運転者数も減少している。「自動運転しか解がないというところもある」(土井常務執行役員)。

研究も活発化しており、トヨタ自動車ホンダなど自動車大手をはじめ、異業種やスタートアップも名乗りを上げる。政府も「レベル4モビリティ・アクセラレーション・コミッティ」などの組織で事業者や関係省庁間の連携を進める。

自動運転の実現には車両や運行の管理、予約・配車など多様なサービス事業者との連携が必要でエコシステムの構築がカギだ。「自動運転車両は“律義”な運転をする。遅いと感じる人もいるかもしれない」(同)。自治体や地域住民らが自動運転を受け入れる受容性の醸成も不可欠だ。土井常務執行役員は「安心で良いというのを体験してもらうことが重要。自動運転の機運を盛り上げたい」と力を込める。


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日刊工業新聞 2024年06月04日

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