早期胃がん検出サポート・病院の経営改善貢献…医療で広がるAI活用
医療分野への人工知能(AI)の活用が広がっている。AIにより、検査や診断をより高精度に行うことが可能となってきた。少子高齢化がさらに進む社会における人手不足や医療従事者の働き方改革などを背景に、効率化のニーズは増大する。高品質の医療をより効率的に提供する新たな技術としてAIは欠かせない。(安川結野)
AIを搭載した医療機器は、プログラム医療機器に分類される。日本医療研究開発機構(AMED)によると、2027年の世界市場は23年の393億ドルから2倍以上の865億ドルにまで成長すると予測しており、国内外でさまざまな事業展開の機会が広がっている。
医療AIの開発を強みとするベンチャーのAIメディカルサービス(AIM、東京都豊島区、多田智裕最高経営責任者〈CEO〉)は、内視鏡画像診断支援システム「内視鏡画像診断支援ソフトウエア ガストロAI―モデルG」を3月に発売した。AIで早期胃がんの検出をサポートすることで、より高精度な診断や治療につながる。同システムは、内視鏡画像から細胞や組織を調べる「生体検査」の追加を検討すべき病変候補をAIで検出し、医師の診断を支援する。発見が難しい早期胃がんの病変の検出を後押しし、早期治療を見込める。
AIを活用した医療機器市場は、大手メーカーだけでなくソフトウエア開発が得意なIT企業やベンチャーなど、活躍するプレーヤーの裾野が広がる。医療機器のハードウエアそのものを持たない企業でも事業化できることが、注目を集める要因だ。AIMの画像診断システムはオリンパスと富士フイルムの内視鏡への接続に対応しており、広く活用が期待される。
医療機関の業務そのものをAIによって効率化する取り組みも広がっている。GEヘルスケア・ジャパン(東京都日野市)は、医療現場のデータをAIでリアルタイムに分析し、医療の最適化を図るシステム「コマンドセンター」を展開する。墨東病院(東京都墨田区)において都内では3施設目となるコマンドセンターが導入されるなど、徐々に活用が進む。病床運営やスタッフ配置を最適化し、高品質で効率的な医療が行える。医療従事者の時間外労働の削減にもつながることから、病院経営の改善にも貢献する。
現在のコマンドセンターは中核病院や大規模病院が対象だ。米GEヘルスケアで欧州やアジアなどを統括するエリー・シャイヨー氏は「小規模な病院に向けてスケールダウンすることも重要となる」と強調する。医療機関の規模やニーズに合わせたソリューションとして発展しそうだ。