アップル「iPad史上最強のラインナップ」で反転攻勢、日系電子部品メーカーの商機になるか
米アップルが反転攻勢に出ている。1―3月期決算では主力のiPhone(アイフォーン)が振るわず前年同期比で減収となった同社。直近ではタブレット端末の新製品を発表し、話題に上った。最上位機種には人工知能(AI)処理に適するという「M4チップ」を搭載。端末の高機能化は日系電子部品メーカーなどにとっても商機になると見られている。ただ、日本国内での端末の出荷台数は減少傾向にあり、需要がどれほど盛り上がるかは不透明だ。(阿部未沙子)
iPad(アイパッド)史上最強のラインアップになった―。アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は新製品発表会でこう語った。「アイパッド Pro」や「アイパッド Air」のほか、キーボードやペンシルなどのアクセサリーを15日に発売する。
特に、最上位機種に該当するアイパッドProの進化が著しい。現行機種はM2チップを搭載しているが、新製品にはM4チップを採用。M2と同等の性能を半分の電力で発揮できるという。さらに、画面に2枚の有機EL(OLED)パネルを搭載し、影や暗い場所の細かな表現を捉えられる。
アイパッドProの価格は消費税込みで16万8800円から(現行機種は同12万4800円から)。4万円以上もの値上がりに関して「為替の影響が大きいのではないか」(横田英明MM総研取締役副所長)との指摘もある。
新製品発表の裏側では苦戦を強いられているアップルの姿がみえる。直近の業績は減収で純利益も減益だった。1―3月期の決算では売上高が前年同期比4%減の約907億5300万ドル(約14兆円)と減収。売上高に占める割合が大きいアイフォーンが同10・5%減の約459億ドル(約7兆円)、アイパッドは同16・7%減の約55億ドル(約8480億円)だった。
業績の落ち込みを打開するのに新製品に期待がかかる。アップルだけでなく、サプライヤーも恩恵を受けそうだ。例えば、製品の高機能化に伴い、日系電子部品メーカーが手がけるコンデンサーの需要拡大も見込める。「一般的にカメラの数や中央演算処理装置(CPU)の性能などが向上したり、新しい機能が搭載したりすれば、それに伴い(積層セラミックコンデンサー〈MLCC〉の)搭載個数が増える可能性がある」(業界関係者)との声もある。
ただ、日本国内のタブレット端末への需要は低迷している。MM総研(東京都港区)の2023年のタブレット端末出荷台数調査によると、アップルのアイパッドは約290万台で全体の53・3%を占め、14年連続でシェア1位と人気を博す。ただ、国内のタブレット端末全体の出荷台数は前年比13・8%減の544万台と13年以降では最少となった。
端末価格の値上げや物価高による消費者の購買意欲の落ち込みなどを背景に、24年の出荷台数について「23年と同じレベルになるのでは」(MM総研の横田氏)と予測。アップル以外からもタブレット端末が投入される中、アイパッドの販売動向が注目される。
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