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製錬時の副産物「銅スラグ」をコンクリ用細骨材に

三菱マテリアル、特性と循環型の材料を訴求し普及狙う
製錬時の副産物「銅スラグ」をコンクリ用細骨材に

CUS2・5細骨材コンクリートの圧送性確認試験

 銅の製錬時に副産物として得られる銅スラグ。天然の砂と比べて密度が大きく、品質が安定している特徴を持つ。三菱マテリアルでは、銅スラグをコンクリート用細骨材やケーソン中詰め材といった用途として積極的に提案している。東日本大震災直後、被災地では土木資材が不足する事態が生じたこともあった。循環型の材料で、安定的に供給できる観点からも、今後の普及に期待が持てそうだ。

 三菱マテリアルでは、直島製錬所(香川県直島町)と、グループ会社である小名浜製錬の小名浜製錬所(福島県いわき市)で銅スラグを製造している。銅スラグはセメントの原料向けが大半を占める。

 銅スラグの主成分が酸化鉄であることを生かしているためだ。これまでコンクリート用細骨材に用いることはあったものの、粒度が粗く、「ブリーディング」と呼ばれる現象が発生する課題があることから、対策が必要だった。

 2013年、コンクリート用細骨材として使いやすくするために、小名浜製錬所に破砕機を導入した。粒度を細かく調整し、銅スラグだけで細骨材として使用できる「CUS2・5」の生産を可能とした。

 15年9月には、直島製錬所にも同様の破砕機を導入し、11月からCUS2・5の出荷を始めている。小名浜、直島ともにCUS2・5の生産能力は月産で5000トン程度だ。

 銅スラグは密度が大きいため、”重い“特性が生かせる。コンクリート用細骨材やケーソン中詰め材に用いると、津波に対してより安定性の高い防波堤を築ける。

 これまでにCUS2・5を細骨材として100%使用した重量コンクリートの実績もある。例えば、福島県のいわき市や相馬市の港湾構造物に適用されている。

東北地区で地産地消につながる


 今後の課題について、金属事業カンパニー営業部部長補佐(化成品担当)の浅見誠氏は、「副産物ではあるが、物流のコスト競争力を高めていくことも意識したい」と話す。

 国内には住友金属鉱山の東予工場(愛媛県西条市)、日比共同製錬玉野製錬所(岡山県玉野市)、パンパシフィック・カッパー佐賀関製錬所(大分市)といった銅製錬の拠点があるが、いずれも西日本での生産だ。

 東日本で唯一の銅製錬所である小名浜製錬所で銅スラグを生産し、東日本大震災での復興工事などで使用されれば、東北エリアにおいての”地産地消“につながっているともいえる。

 足元では中国の景気減速や原油安といった不安要因から金属価格が下落し、日系非鉄各社の業績を直撃している。しかし、国内では中期的に見れば、東京五輪に関連した需要なども見込まれており、銅生産も回復が期待されている。

 業界としても、銅スラグが天然砂などよりも安価に供給できる点も訴求しながら、着実に国内での消費量を増やしていきたいところだ。
(文=浅海宏規)
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
銅スラグは工業製品のため、安定した品質や供給ができるのも特徴の一つです。省資源や省エネ化につながることをアピールしながら今後の普及拡大が期待されます。 (日刊工業新聞社第ニ産業部・浅海宏規)

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