中国経済失速が重し…ロボット市場、産業用の不振止まらず
ロボット市場の回復の兆しが見えにくい。企業の設備投資抑制や中国経済の失速が重く、市場の在庫調整にはあと半年程度かかりそうだ。一方、人手不足や人件費の高騰は世界共通課題で、半導体や自動車をはじめとするさまざまな業界で自動化需要が広がる。踊り場は続くが、2025年にもロボットの世界市場はピークを上回るとの予測もあり、メーカー各社は需要回復に期待を寄せる。(高島里沙)
28年2兆円予想も…
富士経済(東京都中央区)の調べによると、24年の製造業向けロボットの世界市場は前年比5・7%増の1兆3957億円になる見通し。24年は年初からスポット的な設備投資が散見されるようになってきたことから回復傾向に向かうと見る。さらに25年には1兆5290億円と、これまでのピークだった22年の市場規模(1兆4728億円)を上回り、28年には2兆円を突破すると予想する。
ただ足元の状況は振るわない。特に産業用ロボットは受注額、生産額ともに大幅減少傾向に歯止めがかからない。
日本ロボット工業会によると、24年1―3月期は産業用ロボットの受注額(会員ベース)が前年同期比24・0%減の1582億円、生産額が同25・0%減の1626億円だった。生産額の下落率は四半期としては過去10年間で最大となった。一部用途での投資先送りや、世界経済の先行き不透明感が大きく響いている。24年の産業用ロボットの年間受注額(非会員含む)については前年見込み比6・0%増の9000億円を予想する。
在庫調整に半年程度 EV先送り、HV期待
ファナックの山口賢治社長はロボットの在庫調整について、「当初見込みよりも、在庫調整に時間がかかっている。(4月の決算発表時から)少なくとも半年はかかる」と見通す。同社は25年3月期連結業績を減収、全利益段階での減益と予想。電気自動車(EV)の製造に用いられるロボットだが、EV投資の先送り影響を受けてロボット投資も遅れている。ただ「ハイブリッド車(HV)やエンジン車は投資を早める動きも出ているので、(EVのマイナスをHVなどのプラスで)相殺するだろう」(山口社長)と見る。受注については若干増える程度だとする。
一方で安川電機の25年2月期連結業績はロボット事業を中心に売上高、営業利益ともに過去最高を更新する見込み。製造業の自動化・省力化投資が回復すると見る。小川昌寛社長は「23年度の第3四半期が底で、第4四半期にかけてサーボモーターもロボットも回復基調にあり、24年度は上昇基調に入る」との見方を示す。
協働型の裾野広がる 中国けん引、FA需要増
ロボット別では、協働ロボットや小型の垂直多関節ロボットの大幅な伸びが期待される。人手不足を背景に手作業からの置き換え需要が高まっている。富士経済では、28年の協働ロボット市場が21年の約3倍となる2430億円に拡大すると予想。またクリーン搬送系のウエハー搬送ロボットも、半導体製造装置の需要増加に伴い伸びが見込まれる。
協働ロボットはオプション品の充実で需要の裾野を広げており、市場は中国を中心に拡大している。デンマークのユニバーサルロボット(UR)は、パートナー企業のハンドやグリッパーなどを周辺機器として認証し、認定製品の拡大を図る。
この4月にはオリエンタルモーター(東京都台東区)の中空ロータリーアクチュエーター「DGIIシリーズ」を周辺機器プラットフォーム(基盤)「UR+(プラス)」製品として認証した。
これまで欧州メーカーが市場拡大をけん引してきたが、近年は台湾や中国メーカーなどが実績を伸ばす。またロボットメーカーによる参入も相次ぐ。
今後も人手不足による工場自動化(FA)需要の高まりは続くと見られる。
その中でロボット関連メーカーには、自動車や半導体業界をはじめとする大型の設備投資需要の時期を適切に見極め、捉える動きが求められる。