勝負は3カ月…学術会議法人化へ具体設計、 「統治強化」避けられず
日本学術会議の法人化に向けて組織制度や会員選考の具体設計が始まった。政府の特別機関から法人格を持つ独立した組織に改める。内閣府はそれぞれの作業部会を設置して検討を始めた。学術会議は総会を開き2023年末の政府決定への懸念を表明した。両者の時間軸にはずれがある。丁寧な対話が進むのかが注視される。(小寺貴之)
「この3カ月で決まると感じている」と日本学術会議の光石衛会長は説明する。22、23日の両日に開いた総会で政府と学術会議の乖離(かいり)点を共有し、23日には財政基盤や過重なガバナンス(統治)制度などの懸念を声明として発出した。特に会員の選考法は現会員が会員候補者を推薦するコ・オプテーション方式の堅持や学術会議自身が方法を決めることを求めた。
過重なガバナンス制度については、予算規模が10億円弱と小さな学術会議に対して、大学などと同じように中期計画の執行管理を求められると管理過多で本来の活動を損ないかねないと懸念する。
内閣府は、会員の選考法に関しては「会員選考は学術会議が最も大切にしているところ。丁寧に検討したい」(泉吉顕参事官)と尊重する。一方では、金額の多寡に関わらず公的資金を使う以上は必要なガバナンスを求めると説明してきた。政府決定の文書でも必要な財政的支援を行うと明記しており、ガバナンス強化への予算は措置すると見込まれる。規模を理由にガバナンス強化をはね返すのは難しさがある。
運営面では内閣府は運営助言委員会の設置を求めている。この委員は学術会議会員や連携会員以外の者が過半数を占めるように求める。これは国際卓越研究大学のガバナンス強化に内閣府から提示された手法だ。ただ学外統治への懸念から文部科学省が過半条件を緩和した。
学術会議は政府任命の監事や評価組織を置く国は欧米先進国には見当たらず、例外は中国とロシアのみと指摘する。日本への国際的な信用にも関わることから運営助言委員会については学術会議からの提案が認められる可能性がある。
こうした具体の検討を学術会議は年に2回の総会で会員と共有して合意を取る。臨時総会も可能だが予算がなく何度も開けない。これが学術会議と内閣府で時間軸が合わない一因になっている。
学術会議は内部に作業部会を設け組織制度などの検討を進める。ただ学術会議内では法人化の条件闘争に終始せずに、任命拒否問題を解決すべきだという声は根強い。新しい学術会議の形を示して会員全体から合意を取れるかは未知数だ。猶予は残り少ない。光石会長は「ここが勝負どころ」と気を引き締める。