ニュースイッチ

目玉のリングは8割完成…大阪万博開幕まで1年、パビリオン準備の今

目玉のリングは8割完成…大阪万博開幕まで1年、パビリオン準備の今

大阪・関西万博の会場。目玉となるリングは約8割まで建設が進む

2025年大阪・関西万博の開幕まで13日で1年となる。会場建設費・運営費の上昇や海外パビリオンの建設遅れなどネガティブイメージが先行してきたが、会場の人工島「夢洲(ゆめしま)」(大阪市此花区)は目玉の大屋根(リング)が約8割まで完成し、一部パビリオンも姿を見せ始めた。万博は企業の役割も大きく参画企業は多い。企業動向を中心に準備状況を追った。(大阪・広瀬友彦、同・園尾雅之)

13企業・団体が出展

建設が進む「三菱未来館」

「大阪・関西に密着しつつ開幕まで最終コーナーを駆け抜けたい」。三菱大阪・関西万博総合委員会の小美野一事務局長は2日、東京から事務局を移転した大阪市内の拠点でパビリオン説明会を開き、抱負を語った。

三菱グループ30社で構成する同委員会は「三菱未来館」を万博で出展する。その名称は70年の大阪万博、05年の愛知万博でも使われてきた。展示内容はまだ“マル秘”だが、親・子・孫の3世代で語り継がれることを目指す。建築も「生命・地球・人間のつながり」を幾何学で表現するなど特徴を持たせた。

万博で大きな「華」となる民間パビリオンは今回、13の企業・団体が出展する。パナソニックホールディングス(HD)は、10歳前後の子どもたちをターゲットに“一人ひとりのソウゾウする力を解き放つ体験”の提供を目指す。「パビリオンで体験してもらう『ノモの国』の物語をアニメ化し夏頃に公表する」と万博推進担当の小川理子参与は明かす。

住友グループ19社で構成する住友EXPO2025推進委員会は、森が舞台のパビリオンとして「子どもたち向けの植林体験を実施する」(西條浩史事務局長)方針だ。電気事業連合会の「電力館」は来場者が独自の「タマゴデバイス」を手に持ちパビリオン内を巡る。展示に合わせ同デバイスが光ったり振動したりと体感を通じ、エネルギーの重要性を伝える。電気事業連合会大阪・関西万博推進室の岡田康伸室長は「未来を切り開く技術を楽しんでほしい」と訴える。

飯田グループホールディングス(HD)は、大阪公立大学と共同でパビリオンを出展。両者は人工光合成を搭載した住宅の実証実験を続け、その成果や最新技術を紹介する。日本の伝統織物である西陣織でパビリオンを覆う外観も大きな特徴だ。

「飯田グループ×大阪公立大学共同出店館」。伝統的な西陣織をまとった外装(飯田グループホールディングス)

NTTは自社パビリオンで次世代光通信基盤「IOWN(アイオン)」をはじめ最先端技術を活用し、未来のコミュニケーションのあり方を示す。自社パビリオン以外にも会場内の他のパビリオンや催事施設などを「IOWN」で接続し、多くの展示演出も支える。

「パビリオンでは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を初めて建設に採用したドームをつくる。持続可能な海を次世代に残すべく、行動変容を起こせるような映像も披露する」と強調するのはNPO法人ゼリ・ジャパンの更家悠介理事長。更家氏は中堅企業のサラヤ(大阪市東住吉区)社長も務め、万博への思いは強い。建築コストなどが当初より大幅に膨らむなど資金面の苦労もあるが「会社として新たなビジネス創造につながる」と、万博効果を期待する。

万博後のレガシー(遺産)も重要だ。パソナグループは万博後にパビリオンを本社がある兵庫県・淡路島へ移設すると決めた。ファン層の広いアニメ「機動戦士ガンダム」を軸にパビリオン展開するバンダイナムコホールディングス(HD)は「子どもたちがテクノロジーや宇宙について興味を持ち、未来社会を創造する力につなげてほしい」と願う。大阪外食産業協会は「万博出展を機に日本食の魅力や価値を国内外に訴求できれば」とする。

中小・新興も参画

万博では中小企業・スタートアップも参画機会がある。3月末、大阪府・市が運営する「大阪ヘルスケアパビリオン」内の展示・出展ゾーンに出る中小・スタートアップ377社が公表された。大阪産業局や大阪商工会議所、りそな銀行など実施主体14者が設定した各テーマから出展者を選定。みらいの暮らしや健康、脱炭素、町工場の力など、週替わりテーマで出展を行う。

「将来に一石を投じる展示をしたい」。大阪冶金興業(大阪市東淀川区)の寺内俊太郎社長は関西大学と連携し人工ルビーをミリ波で加熱加工する技術や、テーラーメイドの3次元(3D)人工骨などを披露する予定だ。他の企業も超電導で空中に浮く靴や、月面で動く電動バイク試作品など独創的な内容が並ぶ。多くの中小・スタートアップは万博を飛躍台にとの思いを寄せる。

日刊工業新聞 2024年04月12日

編集部のおすすめ