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12人分まとめて洗浄、パナソニックが一見“意外”な大容量食洗機を投入した理由

12人分まとめて洗浄、パナソニックが一見“意外”な大容量食洗機を投入した理由

複数回の食事の食器をまとめ洗いしたいというニーズに応えた大容量食洗機

パナソニックはシステムキッチンに組み込むビルトイン型の食器洗い乾燥機(食洗機)で、約12人分の食器や調理器具を収納しまとめて洗浄・乾燥できる大容量タイプを2023年12月に投入した。パナソニックのグループ会社で建築・住宅用製品を手がけるパナソニックハウジングソリューションズ(大阪府門真市)のシステムキッチンなどに採用されている。核家族化が進んだ現代で大容量タイプの投入は一見すると意外だが、実は最近の生活スタイルの需要に応えた製品だ。

大容量タイプのニーズは「在宅勤務によって1日3回の食事の全てを自宅で取る人が出てきた」(パナソニックハウジングソリューションズ)ことによって生まれた。「自宅にいても仕事があると食事ごとに食器を洗うのは負担になる。夜にまとめて洗いたいというニーズに応えた」(同社)形だ。通勤する場合でも忙しい朝食後に食器を洗うのを避け、時間のある夕食後に2回分をまとめ洗いする事例は少なくない。

パナソニックの調査では約65%の世帯が2食分以上の食器をまとめ洗いしており、多くの需要を見込む。4人家族の3食分の食器をまとめ洗いできるよう庫内容量を約164リットルとし、のべ12人分の容量を確保した。さらに家族それぞれの食事の時間が異なる家庭に対応するため、スライド式の3段カゴで個別の出し入れをしやすくした。

コロナ禍の影響で高まっている清潔さへの要望にも応えた。50度C以上の高温・高圧水流により、予洗いがなくても汚れをしっかり洗い落とすと同時に除菌を行う「ストリーム除菌洗浄」を搭載。上下のノズルから強い水流を噴射して汚れを落とす。洗浄後は湿度の高い日本でもカラッとした乾燥を実現するため熱した温風をファンで庫内へ送り込むヒーター乾燥も搭載した。

洗い落とした食べかすを集める「残さいフィルター」は網の目が細かく、ゴマなど微細なかすでも食洗機庫内への再侵入を防ぐ。また、洗浄中の各工程で毎回フィルターを洗浄する独自の自動洗浄システムを持つ。運転後のメンテナンスの頻度を減らし多忙な利用者の負担を軽減する。

水に包んだナノメートル(ナノは10億分の1)サイズの微粒子イオンを発生する「ナノイーX」技術も用いる。イオンを含む送風で洗浄前の汚れた食器が入った庫内のにおいの抑制と除菌を行い、まとめ洗い前の長時間放置の対策とした。洗浄後は24時間、同様にナノイーXの送風運転を行い、洗浄後の食器の保管環境を清潔に保つ。(編集委員・安藤光恵)

日刊工業新聞 2024年04月09日

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