トヨタが掲げる「もっといいクルマ作り」象徴の場所、全面開業した「トヨタテクニカルセンター下山」の全容
ガズー・レクサス開発者2000人移転
トヨタ自動車は車両の研究開発と試験走行、整備を一体で行える施設「トヨタテクニカルセンター下山」を全面開業した。愛知県豊田市と同岡崎市にまたがる敷地面積約650万平方メートルという広大な土地に、テストコースと研究開発拠点を設置した。同社のデザイナーとエンジニア、メカニックが一堂に会することで、開発スピードや品質の向上に加え、これまでなかった新たな製品の発明も期待できる。トヨタが掲げる「もっといいクルマづくり」を象徴する場所となる。(名古屋・川口拓洋)
「道を走って、壊して、直すことこそクルマづくり」―。トヨタテクニカルセンター下山の全面開業を受けて2日に開いた完成式典で豊田章男会長はこう強調した。トヨタではラリーやレースといったモータースポーツの現場を通じて、車を走らせ、壊し、改善する取り組みを進める。これに加え、同社のテストコースでも車の「走る・壊す・直す」を循環させることが可能になった。
同センターは約3000億円を投じて整備。まず2019年4月に、1周5・3キロメートルで高低差の大きい「カントリー路」がメーンの中央エリアの運用を開始した。21年10月には同社で最も長い直線距離2キロメートルのコースを含む11種類のテストコースを持つ東エリアを整備。24年3月には企画・設計・デザインの技術者が共同で勤務する車両開発棟が稼働した。
豊田会長は「コースを走り、作業場に入ればメカニックやエンジニアがいる。すぐに駆け付けられ、車を囲んで相談する場所があった方が良いと考えていた。やっと完成したが、これからがスタート」と期待する。
車両開発棟の完成に伴い、スポーツ車を手がけるガズーレーシング(GR)カンパニーと、高級車ブランド「レクサス」を担う車内カンパニー「レクサスインターナショナル」の開発・企画・評価などを手がける部門、計約2000人が同センターに移転した。レクサスの渡辺剛プレジデントは「下山で素性のいい車を鍛え、世界に届ける」と話し、GRの高橋智也プレジデントは「他の自動車メーカーは(ドイツのサーキットである)ニュルブルクリンクへ鍛えに行くが、同じ鍛え方を社内でできる」と意欲を燃やす。
同センターは豊田市内のトヨタ本社から約15キロメートル、車で30分という立地。本社地区の技術開発の強化や一体運営で製品開発を促進する役割を担う。また、量産前の開発における最終評価を行う場所でもある。トヨタが発売する車を最終判断する“マスタードライバー”でもある豊田会長は「下山の道をたくさん走ることで、トヨタのもっといいクルマづくりは必ず加速する」と決意を示した。