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積層造形ニッケル基超合金…阪大が元素分布予測で高度化する新技術

積層造形ニッケル基超合金…阪大が元素分布予測で高度化する新技術

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大阪大学の奥川将行助教と小泉雄一郎教授、中野貴由教授らの研究グループは物質・材料研究機構と共同で、3Dプリンターによる金属積層造形(AM)を使ったニッケル基超合金の組成で、元素分布を予測するシミュレーション技術を開発した。レーザーで金属溶融するAMでは局所的な急速低下(超温度場)を考慮する必要があり、シミュレーションが難しかった。耐熱性や耐環境性に優れるニッケル基超合金はジェットエンジンなどで用途が拡大。同技術により、AMに最適化した新規ニッケル基超合金の開発につながる。

ニッケル基超合金において9種類の元素分布を予測するシミュレーションと、超温度場シミュレーションを連成させることに成功した。材料中の元素分布を25ナノメートル(ナノは10億分の1)の空間分解能で予測。実際の元素分布を計測・解析した結果と、良好な一致を示したという。従来は主要な元素だけで単純化して解析するか、実験を繰り返すなどで対応せざるを得なかった。

AMでは局所的に溶融した部分が、鋳造法など従来方法と比べ1000倍以上で急速冷却するため、原子の並び方やそれによる部材特性の制御が可能となる。一方で局所的な元素分布の偏りからAM特有の特殊界面を形成し、部材劣化につながる問題もあった。シミュレーションで精緻な元素分布を予測することで変形や破壊を予測できるだけでなく、高強度な合金設計や、AMに特化した多元素合金開発につながる。

AMによるニッケル基超合金での元素分布シミュレーション技術は世界初としており、研究グループでは5年以内にAMに最適化した新規合金の開発を目指す。AM組成のニッケル基超合金は既に一部が実用化。高性能化した材料開発が進めば航空宇宙や自動車、エネルギーなど幅広い分野での実用化が期待される。

同研究は日本学術振興会の学術変革領域研究(A)と科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)の支援を受け実施した。

日刊工業新聞 2024年04月03日

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