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サプライチェーンを知ることは顧客の信頼を得る基本

知っておくべき調達・生産・販売の基礎知識 #9 著者インタビュー

若手女性社員が営業部署への異動を機に顧客と社内の関係部署との間で経験を積み、一人前の営業担当者へと成長していく。そんな漫画のストーリーに沿って製造業のサプライチェーンを解説する『まんがでわかるサプライチェーン 知っておくべき調達・生産・販売の流れ』(日刊工業新聞社)が上梓された。製造業における調達・生産・販売の流れを理解し、基本的な知識が身につく格好の入門書だ。
 著者の古谷賢一氏に本書の狙い、サプライチェーンを学ぶポイントを語ってもらった。

サプライチェーン全体の流れに着目

―「サプライチェーン」という用語は一般的になってきました。産業界においてサプライチェーンが意識され始めたのは、いつ頃からでしょうか。
 「サプライチェーン」の概念は昔からあるものですが、意識される大きな転換点になったのは、1982年に発表された論文だといわれています。サプライチェーンを適切に管理することで業務を効率化するという概念と、「サプライチェーンマネジメント(SCM)」という言葉が提唱されました。 このSCM、業務の効率化のためには、企業の各部署が個別に活動するのではなく、サプライチェーン全体の「流れ」に着目して関係部署が連携することが重要だという考え方で、当時はとても画期的でした。

2000年代になると、調達から生産、販売までの流れを最適化する手段として、IT技術の活用が盛んになり、SCMの言葉もその頃には広く世に知られるようになります。さらに2020年前後から社会環境の不確実性に耐えうる生産を実現するためにも、改めてサプライチェーンの重要さが見直されるようになりました。

モノの滞留を手がかりに

―サプライチェーンを止めない仕組みは簡単なことではありません。どのように取り組み始めたらよいでしょうか。
 まずは、サプライチェーンが止まっているところ、具体的には、倉庫や生産現場で、モノ(原材料や仕掛品など)が滞留しているところに着目するとよいと思います。モノが滞留しているところには、必ずサプライチェーン上の課題が存在しています。

「数日間、置きっぱなしになっている仕掛品」「数カ月前に買ったまま使われていない原材料」などを探し、なぜそのような状態になったのか、原因を突き止めて対策するのです。モノの滞留は目で見てわかりやすいので、最初に取り組むにはよいテーマです。

―本書の読者対象を「営業担当者」に据えていますが、営業担当者や専門外の方がサプライチェーンを知る意義はどこにありますか。
 製造業でも小売業でも、製品や商品などの、モノの流れがある以上、関係する人たちと必ず連携して業務を進める必要があります。自部署だけの都合で業務を進めると部分最適になることもあり、自部署にとっては都合がよくても、会社や組織全体としては必ずしも全体最適にはなりません。
 モノの流れを最もスムーズにするためには、お互いの業務の流れを知り、お互いに連携することが必要なのです。

―まずは「社内の流れを知ること」が本書の入口になっています。他部署の業務内容をどこまで理解しておくと、営業担当者にとって活かせる知識となりますか。
 企業では、さまざまな業務を、複数の部門が分担して行っています。それぞれの部署が専門的な知識を活用して担当業務を行っています。営業担当者は、それらをすべて知る必要はありません。

しかし、それぞれの部署の仕事が、サプライチェーンにどう関わっているのかを知っておくと、他部署との意見の食い違いなどトラブルを減らすことができますし、他部署と連携することもやりやすくなるのです。これが、スムーズに仕事を進めるためのポイントだと考えてください。

日常的に発生するトラブルを素材に

―古谷さんが漫画の原作も執筆しました。ストーリーがリアルに感じるのですが、漫画で発生するトラブルはよくあることでしょうか。
 漫画はすべて、実際に発生したトラブルを題材にして描いています。企業の大小や、業種の区別を問わず、珍しい特殊なトラブルではなく、むしろ、日常的に発生しているトラブルです。
 もちろん、漫画は、ページ数の制約がありますので、複雑なトラブルの背景などは省略しています。

実際は単純ではありませんが、トラブルの本質的な部分は、実務経験の豊富な方であれば、過去に何度も経験されたことだと思います。

まんがのストーリーを入り口にした解説書

―漫画はワイヤレスイヤホンのメーカーが舞台ですが、サプライチェーンは業種による違いはありますか。
 業種によって、モノづくりの流れは変わります。なので、具体的なサプライチェーンの中身は業種によって変わります。簡単な事例でいうと、自社ですべて生産活動をしている場合もあれば、生産工程の一部を外注している場合もあるといった具合です。

しかし、加工産業、組立産業、装置産業など、どの業種においても、サプライチェーンを止めないこと、スムーズにサプライチェーンが流れるようにすること、といった基本的なあるべき姿はまったく同じと考えてください。

(『工場管理』2024年4月号より一部抜粋して加筆)

<書籍紹介>
書名:まんがでわかるサプライチェーン 知っておくべき調達・生産・販売の流れ
著者名:古谷賢一 著/日豆思惟子 作画
判型:A5判
総頁数:192頁
税込み価格:2,200円

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
Nikkan BookStore

<著者略歴>
〇著者
古谷 賢一(ふるたに けんいち)
株式会社ジェムコ日本経営 プリンシパル本部 本部長コンサルタント
大阪産業大学経営学部商学科非常勤講師
【資格】公益社団法人全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント、ICMCI(国際公認経営コンサルティング協議会)認定コンサルタント、MBA(経営学修士)
【略歴】大手鉄鋼メーカーにて、主に電子回路モジュールおよびコンピュータなど情報機器の開発製造事業に従事。開発・設計・製造・生産技術・品質保証・品質管理等の業務に従事し、本社より分社した事業会社の品質保証責任者、生産技術部門長および海外生産子会社(フィリピン、中国)の品質管理責任者を歴任。生産子会社・協力工場や、部材ベンダー・取引先へのものづくり指導、生産技術指導、品質指導を、国内外問わず多く手がけている。
その後、ジェムコ日本経営に入社。経営管理、人材育成から、品質改善支援、ものづくり革新支援など幅広い分野に従事し、"地に足がついた活動"をモットーに、現場に密着し、きめ細かい実践指導は顧客から高い評価を得ている。
タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムおよびハンガリーなど、海外での支援実績も多数あり。
【著書】『工場長の教科書』『在庫戦略の教科書』(共に日経BP)。雑誌『工場管理』(日刊工業新聞社)にて「Z世代の新人育成バイブル」を連載。『工場管理』『型技術』(同)にて寄稿多数。
【専門分野】経営管理・経営戦略、ものづくり現場改革・生産合理化、品質管理・品質改善、組織・人材開発
〇作画
日豆 思惟子(ひず しいこ)
九州在住のデザイン系フリーランス。心地よく感じられる作画を目指す。
ウェブサイト:https://honeysuckle-nagasaki.tumblr.com/

<目次>
第1章 サプライチェーンを知ろう
第2章 顧客から納期の前倒し要望
第3章 急な増産対応の依頼
第4章 値下げ要請に直面する
第5章 品質クレームにどう対応するのか

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