触媒活性1.6倍…北大と産総研、外挿的機械学習で「低温逆水性ガスシフト触媒」開発
北海道大学の清水研一教授と陳鐸天大学院生、産業技術総合研究所の峯真也研究員らは、外挿的機械学習を用いて低温逆水性ガスシフト(RWGS)触媒を開発した。白金触媒に最大5種類の元素を添加して性能を上げる。元素の電気陰性度や密度などの値を学習させる。すると学習データにない元素の効果を予測できる。実際に触媒研究者が想定しなかった元素が提案され、触媒活性が約1・6倍に向上した。
触媒研究に機械学習を活用する場合、多くは活性データと元素組成を学習させる。元素組成をアルファベットで表現しても元素の性質が反映されない。そこで原子半径や融解エンタルピー、二酸化炭素(CO2)の吸着エネルギーなどの八つの指標に直して学習させた。
低温RWGS触媒の添加元素を最適化する問題に適用すると、白金にルビジウムとバリウム、モリブデン、ニオブを添加した組成が提案された。通常ニオブは研究者に選ばれない。各元素の役割を調べるとニオブが白金から電子を奪い、一酸化炭素(CO)による被毒を抑えていた。
バリウムとルビジウムは塩基として働き、表面吸着を促す。モリブデンは酸化物が還元反応を促す。いずれの元素も取り除くと活性が落ちた。RWGS反応はCO2と水素からCOを得られ、CO2の資源化につながる。
触媒組成の候補は最大で約600兆存在する。この中から300種を合成して新触媒を見つけた。300データの学習後は予測精度を表す決定係数が0・81に向上した。触媒の組成でなく、電気陰性度などで触媒レシピが示されるため実際に合成できるものを研究者が選ぶ必要がある。多元素触媒など、人手では最適化しきれない研究に提案していく。
日刊工業新聞 2024年03月25日