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博士人材の活躍促せるか。経産・文科省、企業・大学向け手引き

経済産業省は2025年度にも文部科学省と共同で、博士号を持つ人材の企業での活躍を促す手引きを策定するなどの情報発信を始める。博士課程で得られる専門知識を企業などで生かせる機会が少ないことを踏まえ、経産省は企業に、文科省は大学にそれぞれ働きかけ、博士人材の育成や活用を促す。社会で活躍できる環境整備につなげる。

経産省は博士人材の活用を促進するための報告書に、博士人材の活躍に関する企業向け手引きの策定を検討することを盛り込んだ。博士人材が持つ専門知識だけでなく、情報分析や論理的思考力など、分野横断的な能力を企業で生かしてもらう。

文科省では大学において、社会で活躍できる能力を身につける教育や博士課程の学生に向けた経済的支援の方策を検討する。

経団連は2月、博士人材や女性理工系人材の採用・活用を促す政策提言を行い、政府や大学には産業界で活躍できる人材を増やすため教育改革や博士課程学生の経済的支援の拡大を求めた。研究者が企業や大学など複数の組織に所属して働ける仕組みも提言している。

博士人材の育成、活躍を促す背景にはイノベーションを起こす高度人材の重要性が高まっていることがある。

文科省の統計によると、日本の博士課程の入学者は23年度が1万5014人。ピークの03年度の1万8232人から約18%減少している。博士号取得者数を米国など主要7カ国と比べると、人口100万人当たりで日本は123人(20年度)だったのに対し、ドイツは338人(21年)、英国は340人(21年)、米国は285人(19年度)で4割前後に過ぎない。

また、21年の博士号取得者は00年と比較して、米国やドイツ、英国、韓国では増加しているが、日本は横ばいが続いている。

少子化に加え、博士人材が企業などに就職しても高度な知識を発揮できる環境や待遇が不十分なため、若者が進学先として選択しにくい。この状況を放置すれば、高度人材の確保が難しくなる。

日刊工業新聞 2024年03月25日

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