ＥＮＥＯＳホールディングス（ＨＤ）は２８日、空席となっていた社長に宮田知秀副社長（５８）が４月１日付で就任する人事を発表した。前任の斉藤猛社長がセクハラ行為で２０２３年１２月に解任されたことに伴う。同社は１７年にＪＸホールディングスと東燃ゼネラル石油が統合して発足し、旧日本石油系のＪＸ出身がトップを占めてきた。初めて東燃ゼネラル出身の宮田氏が社長に就くことで、傷ついた企業イメージの刷新を目指す。

また従来はＨＤ社長が兼務していた事業会社のＥＮＥＯＳ社長に、山口敦治執行役員（５３）が就任する。

ＥＮＥＯＳＨＤは、２２年にセクハラ行為で当時の杉森務会長が辞任しており、２年連続の不祥事。いずれも旧日石の営業畑出身で、「旧日石には古い体質が染みついているのではないか」という疑念も浮上していた。

ＨＤの宮田氏、事業会社の山口氏はともに理系出身の技術者。染みついた企業イメージの払拭を目指す。

一方、取締役の会食出席時のルール制定など再発防止策も強化。６月をめどに社外取締役の比率を５０％超にすることも決めた。

【略歴】宮田知秀氏　９０年（平２）東工大院原子力工学修士修了、同年東燃（現ＥＮＥＯＳＨＤ）入社。１１年取締役和歌山工場長、１２年常務川崎工場長、１６年専務。１７年ＪＸＴＧエネルギー取締役、２２年ＥＮＥＯＳＨＤ副社長。大阪府出身。
【略歴】山口敦治氏（やまぐち・あつじ）９４年（平６）東大院化学工学修士修了、同年三菱石油（現ＥＮＥＯＳＨＤ）入社。２３年執行役員リソーシズ＆パワーカンパニー電気事業部長。神奈川県出身。

ENEOSHD社長に就任する宮田知秀（みやた・ともひで）氏の素顔／高い倫理観で旧習刷新　

斉藤猛前社長の不祥事を受けて就任しただけに、２８日の会見でも「私自身の意思としてそういうことは起こしません」と明言した。

宮田氏を選任した指名諮問委員会議長の工藤泰三社外取締役は「技術面で幅広い知見を持ち、高い倫理観を持って古い慣習を刷新できる人物」と評価。今回の社長選びでも、リスクが顕在化しやすい場面でどんな行動をとるかを、インタビューやアンケートで分析した上で選任された。

新社長として「従業員が安心し、誇りを持って働ける環境づくり」が何よりも重要と認識する。ランダムに選んだ役員・従業員約１６０人に第三者機関がヒアリングし「改善すべき慣習や埋めるべきギャップがあることを把握した」と話す。

社内評は「沈着冷静で合理的な判断ができる人」。理系で研究開発・製造部門が長いが、早くから経営陣に名を連ねる。「生まれ変わる覚悟をもって経営にあたりたい」と決意する。（根本英幸）