建設「2024年問題」対応急げ。三菱電・パナソニック・ダイキン、空調機施工を省人化
金具構造に工夫、時短・負担減
空調冷熱各社が時間外労働の上限規制が4月から適用される建設業界の「2024年問題」への対応を加速している。空調機メーカーは少人数であっても施工しやすいよう部材の構造に工夫を凝らし、施工所要時間の短縮も図る。各メーカーは遠隔で空調機の状況を監視できるサービスの提供などを通じ、これまでも省人化や省力化に貢献してきた。労働力不足の懸念が高まる中、より多面的な取り組みが期待される。(阿部未沙子)
建設業界では就業者数が減少傾向にある。日本建設業連合会によると、建設業就業者数は1997年の685万人をピークに減少が続いており、2022年は1997年比30・1%減の479万人だった。人手不足が指摘される中、2024年4月からは建設業での時間外労働の上限が原則月間45時間、年間360時間となる。
空調冷熱各社はこうした建設業界の状況を踏まえ、対応を急ぐ。三菱電機はダクト用の換気扇を設置する際に必要な金具の構造を変えることで省人化を実現した。「2人で行っていた作業を1人でできるようになる」(三菱電機)。
具体的には、従来は穴があいた構造だったが、新製品ではU字に開いた構造を採用。金具を横から引っかけて据え付けられるため、施工時の負担が減る。また、ゴムワッシャーの内周を凹凸の形状にしたことで、ゴムワッシャーが吊りボルトから落下するのを防ぎ、拾う手間を減らせる。
パナソニックは次亜塩素酸空間除菌脱臭機「ジアイーノ」シリーズから、施工時の負荷を軽減する「天井カセット形ジアイーノ」を7月に発売する。1台当たり最大60平方メートルの床面積に対応。ダクトの接続が不要なため、簡単に施工できる点を訴求する。
若手でも接続簡単に
一方、ダイキン工業は室内機と冷媒が流れる配管の接続で使う金具「フレアレスジョイント」を展開する。接続時、従来は配管の端をラッパ状に加工する「フレア加工」が必要だった。フレアレスジョイントの場合は加工を必要とせず、配管を金具に差し込むだけで施工が完了するため、施工時間を従来比約14%削減可能という。「従来は職人の感覚を頼りにすることが多かったが、フレアレスジョイントを使うことで若手でも施工ができる」(ダイキン)と、時間短縮以外の効果も期待される。
空調各社は施工時だけでなく、施工後の省力化にも注力してきた。日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS、東京都港区)は、空調機の運転状況を遠隔で監視できるサービスを展開。三菱電機も冷媒の漏れなどを遠隔で把握できる「MELく~るLINK」を提供している。
時間外労働の上限規制が適用される2024年問題は建設業界だけにとどまらない。少子高齢化に伴う労働力人口の減少をにらんだ空調冷熱各社の取り組みが一段と求められそうだ。