電力自由化は再生可能エネルギー普及に逆風か
自由化で温暖化が加速?販売は差別化?バックアップはどうする?
「電力自由化時代における再生可能エネルギーの位置づけと展望」と題したプレスセミナーが23日、都内で開かれました。
電力を自由に選べる自由化時代に突入すると、電力小売り事業者にとって価格が最大の競争力になります。経済原理に従えば、高価な再生エネは敬遠されます。しかも目標値を決めた再生エネ普及策は自由化と相容れないと指摘されています。自由化が再生エネ導入テンポを鈍らせるのか、興味があったので聴講しました。
まず登壇者の紹介です。電力の価格比較サイト「エネチェンジ」の巻口守男副社長。テレビに頻繁に登場し、電力料金プランを解説している方です。
国際環境NGO「FoE JAPAN」の吉田明子さん。再生エネで発電した電力を販売する事業者を増やそうと活躍されている方です。
スマートテックの岡野太郎部長。Jリーグ・水戸ホーリーホックと「水戸電力」を設立するなど、地域電力会社の立ち上げ支援をしている方です。
Looopの小嶋祐輔部長。DIY感覚で設置できる太陽光発電所のキット販売や電力小売りを展開する同社の事業戦略を説明するスポークスマンです。
セミナーのテーマである自由化後の再生エネの行方について、「危惧」という言葉を何度も使って懸念を伝えたのが吉田さんです。「価格競争で石炭、原発に流れるのを危惧している」(吉田さん)。
すでに、安い電力を大量供給できる石炭火力発電所の建設計画が全国各地にあります。石炭は燃やすほどCO2が発生するので、温暖化対策に逆行すると吉田さんは危惧しています。
さらに、新しく出てきた電力料金プランを見た感想から「電気を多く使う人ほど安くなる。省エネしなくても電気代が安くなる。3・11後、節電を呼びかけてきたのに、自由化で省エネが進まなくなると危惧している」と訴えました。
安ければ電気の価値も下がり、ついつい使いすぎてしまいます。そうすると石炭火力の利用も増え、CO2がどんどん排出される悪循環に陥ります。
吉田さんは「状況は厳しいが、再生エネを重視する小売り事業者に消費者が向かうようにしたい」と語りました。ただし「再生エネを扱う小売り事業者は少なく、消費者が選択できない」と嘆いていました。
この点について、Looopの小嶋さんが「家庭向けに電力を販売すると発表すると再生エネ比率で検討する消費者がいることがわかった」とコメントしました。同社は電力小売り事業参入に当たり、消費者に再生エネの電力をできるだけ多く販売する方針を打ち出しています。
また「発電事業者が、電力がどう売られていくのか意識するようになるのが自由化だと思う。再生エネ中心の小売り事業者に売りたいと考えている発電事業者も出てくる」とも付け加えました。
FITのおかけで電力ビジネスに縁がなかった企業も太陽光発電所を作れば「発電事業者」になれました。今はFITの仕組みに従って自前の発電所で作った電力を大手電力会社に売電していても、自由化をきかっけに売り先を検討するようになるだろうと小嶋さんは考えています。そうなると同社も再生エネの調達量を増やせます。岡野さんは「営業マンの立場から言うと、再生エネの販売量が多いと他社との差別化になる」と加勢しました。
巻口さんは「バックアップを誰が持つかで、自由化の絵姿が変わる」と違う問題を提起しました。バックアップとは、天候によって太陽光や風力の発電量が低下した時に備えて待機している火力発電です。毎日、稼働している訳ではなく、急な電力不足の回避のために待機している電源です。再生エネが普及するほど、バックアップ電源が必要となります。
自由化が進むと発電事業者、電力を送る送電事業者、売るだけの小売り事業者に分かれます。するとバックアップの費用はだれが負担するのでしょうか。
再生エネと関係がない話題ですが、興味深かった巻口さんの話を最後に紹介させて下さい。
自由化の先輩である英国では電力会社の切り替えで44%の人が価格比較サイトを利用しているそうです。その比較サイトは政府の認証を受けた12社が存在します。認証制度は中立性を保つためにできたとのことでした。
米国でも公平性を担保するために州政府が比較サイトを運営しています。逆にドイツは100以上のサイトが乱立しているそうです。
電力を自由に選べる自由化時代に突入すると、電力小売り事業者にとって価格が最大の競争力になります。経済原理に従えば、高価な再生エネは敬遠されます。しかも目標値を決めた再生エネ普及策は自由化と相容れないと指摘されています。自由化が再生エネ導入テンポを鈍らせるのか、興味があったので聴講しました。
まず登壇者の紹介です。電力の価格比較サイト「エネチェンジ」の巻口守男副社長。テレビに頻繁に登場し、電力料金プランを解説している方です。
国際環境NGO「FoE JAPAN」の吉田明子さん。再生エネで発電した電力を販売する事業者を増やそうと活躍されている方です。
スマートテックの岡野太郎部長。Jリーグ・水戸ホーリーホックと「水戸電力」を設立するなど、地域電力会社の立ち上げ支援をしている方です。
Looopの小嶋祐輔部長。DIY感覚で設置できる太陽光発電所のキット販売や電力小売りを展開する同社の事業戦略を説明するスポークスマンです。
「危惧」という言葉を何度も使う
セミナーのテーマである自由化後の再生エネの行方について、「危惧」という言葉を何度も使って懸念を伝えたのが吉田さんです。「価格競争で石炭、原発に流れるのを危惧している」(吉田さん)。
すでに、安い電力を大量供給できる石炭火力発電所の建設計画が全国各地にあります。石炭は燃やすほどCO2が発生するので、温暖化対策に逆行すると吉田さんは危惧しています。
さらに、新しく出てきた電力料金プランを見た感想から「電気を多く使う人ほど安くなる。省エネしなくても電気代が安くなる。3・11後、節電を呼びかけてきたのに、自由化で省エネが進まなくなると危惧している」と訴えました。
安ければ電気の価値も下がり、ついつい使いすぎてしまいます。そうすると石炭火力の利用も増え、CO2がどんどん排出される悪循環に陥ります。
吉田さんは「状況は厳しいが、再生エネを重視する小売り事業者に消費者が向かうようにしたい」と語りました。ただし「再生エネを扱う小売り事業者は少なく、消費者が選択できない」と嘆いていました。
この点について、Looopの小嶋さんが「家庭向けに電力を販売すると発表すると再生エネ比率で検討する消費者がいることがわかった」とコメントしました。同社は電力小売り事業参入に当たり、消費者に再生エネの電力をできるだけ多く販売する方針を打ち出しています。
どう売られているか意識するようになる
また「発電事業者が、電力がどう売られていくのか意識するようになるのが自由化だと思う。再生エネ中心の小売り事業者に売りたいと考えている発電事業者も出てくる」とも付け加えました。
FITのおかけで電力ビジネスに縁がなかった企業も太陽光発電所を作れば「発電事業者」になれました。今はFITの仕組みに従って自前の発電所で作った電力を大手電力会社に売電していても、自由化をきかっけに売り先を検討するようになるだろうと小嶋さんは考えています。そうなると同社も再生エネの調達量を増やせます。岡野さんは「営業マンの立場から言うと、再生エネの販売量が多いと他社との差別化になる」と加勢しました。
巻口さんは「バックアップを誰が持つかで、自由化の絵姿が変わる」と違う問題を提起しました。バックアップとは、天候によって太陽光や風力の発電量が低下した時に備えて待機している火力発電です。毎日、稼働している訳ではなく、急な電力不足の回避のために待機している電源です。再生エネが普及するほど、バックアップ電源が必要となります。
自由化が進むと発電事業者、電力を送る送電事業者、売るだけの小売り事業者に分かれます。するとバックアップの費用はだれが負担するのでしょうか。
英国では44%の人が価格比較サイトを利用
再生エネと関係がない話題ですが、興味深かった巻口さんの話を最後に紹介させて下さい。
自由化の先輩である英国では電力会社の切り替えで44%の人が価格比較サイトを利用しているそうです。その比較サイトは政府の認証を受けた12社が存在します。認証制度は中立性を保つためにできたとのことでした。
米国でも公平性を担保するために州政府が比較サイトを運営しています。逆にドイツは100以上のサイトが乱立しているそうです。
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