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有機ELパネルを数十万回折り畳める統合部材

住友化学が来年から供給へ。韓国勢の需要取り込む
 住友化学は2017年までに、スマートフォンの表示装置に使う有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネルを数十万回折り畳める統合部材の供給を始める。スマホの販売台数は頭打ちになるが、液晶に比べて薄く高精細な有機ELパネルの需要は年3割伸びる見通し。韓国の電機大手が年内にも発売する有機ELパネルの真ん中で二つに折り畳める次世代スマホ向けの需要を取り込む。

 統合部材は1枚のフィルム上にタッチセンサーと偏光板、ウインドーフィルムの機能を付与する。保護ガラスの代替となるウインドーフィルムにタッチセンサーをパターニングして偏光板をコーティングする見込み。

 これにより折り曲げ強度が増し、外側・内側双方に数十万回以上折り畳める有機ELパネルの作成が可能。厚さも3部材を個別に貼り合わせた場合に比べて半分以下になり、折り畳んでも薄いスマホが生産できる。

 従来の有機ELパネルはタッチセンサーパネル、偏光板、保護ガラスなど複数のガラス製部材を使い、折り曲げができない。

 このため、住友化学はガラス部材をフィルム製にして折り曲げ可能にしたフレキシブル部材の開発に乗り出し、両側面が曲線状の表示パネルを持つスマホにフィルム型タッチセンサーが採用された。

 液晶塗布型偏光板、ウインドーフィルムという折り曲げ可能なフレキシブル部材も開発し、スマホ大手が採用に向けた評価を続けている。こうしたフレキシブル3部材の研究成果を生かし、統合部材の開発を進める。

 調査会社の矢野経済研究所によると、世界のスマホ出荷台数は20年に17億8248万台(15年見込み比23・4%増)となるが徐々に頭打ちになる見通し。

 ただ、米アップルが18年発売のスマホ「iPhone(アイフォーン)」に採用する意向を示すなど、スマホ用ディスプレーで有機ELが普及する見込み。米調査会社のIHSテクノロジーによると、20年のスマホ用有機ELディスプレー市場は15年比93%増の6億8360万枚に増える見通し。
日刊工業新聞2016年3月23日素材面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
アップルの事実上の採用宣言が二次サプライヤーへの動きも活発化させている。今後、部品メーカーと部材メーカーの連係や統合がどこまで進むか。日本の強さを維持するためにも。

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