航続距離は最高200km…福島発、2人乗り「空飛ぶクルマ」開発始動
テトラ・アビエーション(福島県南相馬市、中井佑社長)は、2人乗りの空飛ぶクルマ「eVTOL Mk―7」の開発に乗り出す。福島ロボットテストフィールド(RTF、同市)に隣接する本社敷地内に、格納倉庫を備えた組立工場を2月に開設する予定。2025年には大型組み立て・格納倉庫工場を完成。パラシュートなど安全対策を講じた機体を開発し、25年3月にRTFで飛行実証を実施して実用化を目指す。
同社はすでに1人乗りの「eVTOL Mk―5」を開発。2枚羽根にプロペラを搭載し、リチウムイオン電池(LiB)で回転させる垂直離着陸機で無人飛行に成功している。
この実証を踏まえ、実用機としてMk―7の開発に着手した。機体は翼長が12メートル、長さが7メートル。重量は1・5トンで、このうちバッテリー重量は350キログラム。LiBで駆動するモーターで推進する。材料は翼がアルミニウム、プロペラやフェアリング、内装などはカーボンファイバーを採用する。販売価格は1機1億円を見込む。
基本は垂直離着陸だが滑空も可能で、パラシュートも装備して万全の安全対策を整える。航続距離は最大200キロメートルを想定し、今夏には実機のモックアップを公表する計画。同時に飛行試験用無人飛行機も製作する。
25年3月末にもRTFで100時間程度のフライトを予定。このため、RTFに隣接した南相馬市の産業団地の本社敷地(1・4ヘクタール)に延べ床面積400平方メートルの組み立て・格納庫工場を2月に開設する。さらに25年には2300平方メートルの大型組み立て・格納倉庫工場を新設する。最初の工場は、埼玉県戸田市にある研究拠点と連携して運用する。
飛行実証は本社敷地にあるネット緩衝飛行基地に隣接するRTFの2カ所の飛行実証基地も活用し、長距離飛行も進める。開発には同社への出資企業17社のバックアップを受け、1万点の部品のうち板金加工やハーネスなどは地元企業に発注する。25年度中に人が乗れる機体を実現し、「まず福島県の浜通りと阿武隈高原を隔てた福島市などの中通りを15分程度飛行したい」(中井社長)としている。