「釜山ハブ港」載せ替え…物流の2024年問題、地方港で解決なるか
助成金利用・陸上輸送短縮
物流の「2024年問題」の解決に向け、物流各社が地方港の活用を提案している。欧米やアジアから大型船舶で運んだ貨物を韓国・釜山で載せ替えて地方港へ輸送する。東京や横浜などの大都市近郊の主要港を利用する場合に比べ最終目的地までの陸上輸送の距離を短縮できる。地方港は助成金制度を充実させており、コスト削減効果も期待される。(梶原洵子)
現在、海外からの海上輸送貨物の多くは大型船が入港できる主要港で荷揚げされ、目的地まで陸上輸送されている。だが、4月以降は24年問題により陸上輸送力の確保が難しくなり、コスト増加も予想される。そこで、物流各社が提案しているのが地方港の活用だ。例えば、東京港から栃木県那須塩原市までの距離は200キロメートルを超えるが、小名浜港や常陸那珂港からの距離は約半分に縮まる。
NIPPON EXPRESSホールディングス(HD)で東アジア地域を統括するNX国際物流(中国)とNX韓国は、国際海上輸送サービス「釜山ハブ×日本地方港」を開始した。日本国内の地方港にあるNXグループの30拠点と連携し、地方港経由の輸出入業務を支援することが特徴で、船舶動静情報のタイムリーな提供やターミナル作業の相談などに対応する。
また、両社は中国発の貨物輸送において中国・青島のハブ倉庫を活用して「青島ハブ×日本地方港」のサービスを提供する。
デジタルフォワーディング(利用運送)事業を行うShippio(シッピオ、東京都港区)も、釜山港経由での地方港利用の提案に注力している。今後、各県と共同セミナーなどを開催し、荷主に訴求する。「地方港とウィン―ウィンの関係をつくりたい」(同社担当者)とする。
ただ、冬場の釜山港から日本への海上輸送は日本海が荒れて貨物の滞留が起きやすいことが弱点だ。同社は貨物船の運航状況などの可視化やデータに基づく供給網の設計を得意としており、これを生かして貨物滞留の影響軽減に取り組む。
一方、地方港は航路誘致に向けてさまざまな助成金制度を導入している。「上期に予算を使い切った人気港もある」(シッピオ担当者)といい、荷主は早めの24年問題対策が重要になりそうだ。
4月に働き方改革関連法が運送業界にも適用され、トラック運転手の残業上限規制や勤務インターバル制度が導入されると、1回で運行できる距離は短くなる。長距離輸送に加え、倉庫での荷待ちや荷下ろし時間が長ければ中距離輸送も勤務時間範囲のギリギリになるため、総合的な対策が急務となっている。