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日本でも1億円プレーヤーの登場なるか?欧州のロボット産学連携から学ぶ

文=三治信一朗(NTTデータ経営研究所)人材獲得競争を見直す
日本でも1億円プレーヤーの登場なるか?欧州のロボット産学連携から学ぶ

2015年のハノーバー・メッセで公開されたクカの「KMRイーヴァ」

 欧州では産学連携が活発である。このように書くと、日本はどうだという話になるが、人材獲得は喫緊の課題であると筆者は考えている。産学連携がイノベーションを生む例を取り上げよう。

 独KUKA(クカ)が2年ほど前から、「ライトウェイトロボット」を販売している。これまで40年にわたり、基本的な産業用ロボットのハードウエア、機構そのものは変わってこなかった。もちろん、性能そのものは速度、繰り返し精度の向上を通じて、技術的な進化はみられる。しかし、イノベーションと呼ぶほどまでには変わっていないのが実情である。

 ライトウェイトロボットは、自分の重さと同程度の重さをハンドリングできる点と、人との共存を意識した安全設計、ティーチングと呼ばれるプログラミングの負荷を軽減するといった特徴がある。まだ販売単価は高く、十分に普及するレベルであるというには早いかもしれないが、ハードウエアの進化を遂げたという点で評価したい。

 しかし、このイノベーティブな製品が突如として出てきたわけではない。着想段階からおよそ30年ほどかかって世に登場したのである。まず、ドイツ航空宇宙センター(DLR)において、アームの基本的な設計コンセプトから数十年かかり、プロトタイプができた。それから、さらにKUKAに技術移転され、数年かかりようやく製品化にこぎつけたものである。

 さらに、欧州におけるさまざまな大学・研究機関や、企業において用途開発が行われ、それらのフィードバックがDLRやKUKAにもたらされるという形で、製品が洗練されてくるというわけである。これらのフィードバックループを含め、よくできた産学連携の仕組みが歴史に基づき醸成されているという特徴がある。

プロジェクト単位が長く、リーダーに裁量


 このようなエコシステムは、日本も見習うべき事例として示唆に富む。企業が抱え込むのもいいが、出すところ・出さないところを企業戦略の視点でもう1度洗いなおすべきである。それが標準化戦略、技術戦略につながる。

 また、欧州の学の特徴に、各国と欧州連合(EU)におけるプロジェクト単位が5年程度で構成されるなど、比較的息の長いものが多い点と、もうひとつその裁量がリーダーに多く委ねられる点が挙げられよう。

 リーダーは大学教授が務める場合が多い。リーダーの裁量によっては1億円プレーヤーが存在するなど、憧れの的である場合も多いと聞く。アカデミアは金でないと思いつつ、人材獲得競争の観点で見直す必要がある。
日刊工業新聞2016年3月18日 ロボット面
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
最近は大学でも応用寄りのテーマに予算がつきやすく、かつプロジェクト単位が3年と短い場合が多い。応用だけでなく息の長い学術的探求をする、という大学本来の役割を支える仕組みは必須だ。とはいえ工業や化学分野では将来の産業利用を蚊帳の外にはできない。大学教授にはよりマネージャー的な視点や働きが必要なのかもしれない。

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