東京芸大が「芸術×科技」でモデル確立、受託・共同研究の受入額2.5倍に
東京芸術大学は芸術(アート)と科学技術を掛け合わせ、イノベーションの源泉となる個人・組織の創造性を高める社会実装モデルを確立する。デザインやアートの思考を取り入れたビジネスやスタートアップの創出、香川大学との連携による海洋・離島環境の課題解決を目指す。さらにアートの社会的・経済的インパクトの評価手法を開発し、企業投資を促す。受託・共同研究などの受入額を10年後に現状の2・5倍にする計画だ。
東京芸大は多様な人が集まるアートの社会連携の仕組み「芸術未来研究場」を始めている。芸術系大学において「アートが未来の新産業を生み出す姿を提示する」(日比野克彦学長)研究・経営改革に取り組む。文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」(J―PEAKS)に採択された。
都市型モデルとして、企業人がアーティストと同様の創造者・表現者としてビジネスを生み出すための研修やサービス、デバイス開発に取り組む。芸術的感性で未来を考えるアートシンキングや、クリエーターの思考プロセスを再現して発想の確度を上げるデザインシンキングなどで、新事業創出につなげる。
香川大や香川県とは「瀬戸内海分校プロジェクト」での連携を発展させる。海洋環境や離島・へき地の社会課題に対し、香川大が科学や数値による気づきを促し、東京芸大がアートで行動変容に導く。アートによる観光ビジネスで注目されている、瀬戸内国際芸術祭も活用する。
音楽や美術の価値測定は社会的投資収益率(SROI)での算定に取り組む。アートに接した人の行動変容により、認知症改善や環境保全活動が進む効果を数値で示し、投入資源から引き出された価値を可視化する。日本サッカー協会とデロイトトーマツグループによるスポーツのSROIを参考にする。
日刊工業新聞 2024年01月16日